シップスミス・ロンドンドライジン 風味の特徴を生む製造法
「シップスミス・ロンドンドライジン(Sipsmith London Dry Gin)」はウエストロンドンにあるシップスミス社(ビームサントリー社傘下)が造っている、イギリス産クラフトジンです。
100%英国産の麦を使用したベーススピリッツに、ボタニカルはジュニパー・ベリー、コリアンダーの種、アンゼリカの根、リコリス(カンゾウ)の根、オリス(シロバナイリス)の根、アーモンド、桂皮(トンキンニッケイ)、シナモン、レモンピールとオレンジピールなどの素材が使われています。
これらの風味の特徴を決定づけているのは、スワンネックと呼ばれる銅製ポットスチル。銅は化学変化を起こし、硫黄や脂肪酸などスピリッツに不要なものを排除してくれるほか、スワンネックの曲がり具合が風味に微妙な個性を与えてくれます。
かつて、ロンドンではジンの蒸留に銅製ポットスチルが使われていましたが、現在ではごくわずか。
シップスミス社では現在も超小型の銅製ポットスチルを使うことで、ボタニカルの香りを取り込みやすく、ほかのジンと比べてもずっしりとドライな風味の違いを生み出しています。
ワンショット蒸溜にこだわる高級ジン
製造工程はていねいな「ワンショット蒸溜」。ワンショット蒸溜とは1度の蒸溜に必要な原材料を使って1度だけつくるという意味です。
当たり前のように思えますが、実は価格の安いジンや乙類焼酎などでは同じ原料を何度も連続式蒸留機で蒸留することで、多くのアルコールを抽出して生産性を高めているんですね。
スピリッツを水増ししたり、材料を使いまわしたりということもあり、お酒自体は低価格ですが風味が弱くなります。そのような製造法とは一線を画しているため価格もそれなりで、高級ジンにランク付けされるわけですね。
留出液の原液はロンドンを流れるRiver Thamesテムズ川の源泉の水で40~42度までブレンドされてまろやかな口当たりになっています。
価格やテイスティングレビューの評価
シップスミス銘柄 |
通販販売店の 最安値価格(税込) |
ロンドンドライジン (41.6度・700ml) |
4,000円ほど |
VJOPブラック (57.7度・700ml) |
4,500円ほど |
シップスミス・ロンドンドライジンはアルコール度数41.6度・700mlで、最安値価格(税込)は4,000円ほど。
「タンカレー ナンバーテン(Tanqueray No10)」に風味が近いと言われることもあります。ナンバーテンもシップスミスと同じく、スワンネックの小型単式タイプのポットスチルで造られているため、風味が似た傾向になるのかもしれませんね。
シップスミスのほうが柑橘系の風味、アルコールの辛さがまろやかになっています。このジンのレビューとしてはジンを飲み慣れない方からは「ほかのジンとの違いがあまりよくわからない」という評価もあります。
いっぽうで、ジン愛飲家は違いがよくわかるようで、「ドライで香り高いジン」「キリッとした風味」など評価は高めですね。
ドライなお酒でアルコール度数も高くないので、飲み方はジントニックもいいですが、マティーニ向きかもしれませんね。
クラフトジンブームを牽引するシップスミス
「シップスミス・ロンドンドライジン」は2009年に発売されました。以後、口コミで人気に火がついて、2008年にドイツから誕生した「MONKEY 47(モンキー47)」と並んで、クラフトジンブームを牽引してきました。
シップスミス社の創業者であるサム・ガルズワースィー氏はビール醸造や蒸溜技術の現場経験をもつ人。
ジンが大好きだった彼は長年、ジンの聖地だったロンドンで伝統的なスワンネックの銅製ポットスチルの稼動が止まっていたのを残念に思っていて、本物のジンをロンドンに取り戻したいと考えていました。
そこで、彼はウエストロンドン・ハマースミスにあるウイスキー評論家の故マイケル・ジャクソン氏のオフィス跡地にクラフト蒸溜所シップスミス社を創業。
シップスミスVJOPブラックも登場
この地で酒類製造免許が189年ぶりに発行され、ジャクソン氏のオフィスを改築して蒸溜所はつくられました。
しかも、銅製ポットスチルは同氏が仕事をしていた書斎に設置するという粋な配慮。ラベルにもスワンネックを象徴する白鳥が描かれました。
2014年に広い場所を求めて近所に移転しましたが、ポットスチルは同じもので1バッチ300本という少量生産は変わりません。
2019年1月8日にはジュニパーベリーをスタンダード品の約2倍投入した57.7度、700mlの「シップスミスVJOPブラック(Sipsmith VJOP)」も発売されています。最安値価格(税込)は4,500円ほどなので、わずかの価格差で楽しめます。