No.1シティオブロンドンドライジン・200年ぶりに蒸留所が復活
「No.1シティオブロンドン ドライジン(No.1 City of London Dry Gin)」は、ロンドン市内で2012年に創業したシティオブロンドン蒸留所が製造しています。
シティオブロンドンといえば古代ローマ帝国の貿易の前哨地であり、21世紀は通称シティ。「世界で最も裕福な1平方マイル」として知られる金融街です。
この地区ではかつてドライジンの蒸留が行われていましたが、ジンブームの終焉とともに蒸留の歴史は途絶えました。
2012年に開業したシティオブロンドン蒸留所は、この地において約200年の復活ということで大きな注目を浴びたんですね。
手作りのマイクロディスティラリーにはカクテルBARも併設
単なる話題性だけでなく、職人が手作りで作っていた頃の技術を使い、小さな銅製の蒸留器で蒸留するというこだわりのスタイル。
1回の蒸留で得られる原酒の量はわずか200本という超少量のスモールバッチです。すべてのボトルには丁寧にバッチ番号とボトルナンバーが記載されています。
シティの観光名所のひとつ、セントポール大聖堂のドーム部分がボトルデザインになっているのがユニークな目印です。
ジンに特化した蒸留設備や製造工程は現地で見学できて、ツアーでは4種類のジンの試飲もできるほか、自分のレシピでオリジナルジンを作るイベントも開催されています。
カクテルBARが併設されているので、蒸留所にいるだけでまさに本場のロンドンジンを堪能することができるんですね。
No.1ドライジンの特徴
「No.1シティオブロンドン ドライジン」はアルコール度数41.3度・700mlで最安値は6,500円ほど。蒸留所の名を冠したスタンダードなロンドンドライタイプです。
使われているボタニカルは王道のジュニパーベリー、アンゼリカ、リコリスとコリアンダーの種に柑橘類。ピンクグレープフルーツの香りと微妙な苦味があとから効いています。
なぜ、ナンバーが振られているのかというと、同蒸留所ではNo.5まで5種類のシリーズが販売されているからなんですね。
同蒸留所のジンはNo.5までの種類がある
「No.2クリストファーレンジン」はマスターディスティラーであるトム・ニコル氏が手掛けたプレミアムジン。
45.3度・700mlで強いジュニパーと甘いオレンジピールが特徴です。クリストファー・レンはロンドンのセントポール大聖堂を再建した建築家の名前からきています。
「No.3オールドトムジン」はその名の通り、オールドトムタイプのジン。43.3度・700mlで味は少し甘口、ジュニパーとシトラス系の風味が柔らかく混ざり合っています。
「No.4スロージン」はロンドンドライジンにスモモの仲間であるスローベリーを数か月漬け込んで作られた、28度・700mlのリキュールです。
ちなみに、スロージンはイギリス発祥と言われていて、もともとは酒とスローベリーを使って家庭で作られた混成酒でした。
「No.5スクウェアマイルジン」はNo.2と同じく、シリーズのプレミアムジンとして位置づけられています。ジンのボディが重く、ウッディでビターなテイストが特徴。こちらは47.3度・700ml。
スクウェアマイルとはシティオブロンドンの別名で、シティの大きさが約1マイル四方であることからそう呼ばれています。
ロンドンのジンの歴史
1689年、オランダの貴族だったオレンジ公ウイリアム(ウィリアム3世)がイングランド国王として即位すると、ジンもイギリスに持ち込まれ、ジンはフランスのブランデーに代わる「愛国的ドリンク」として宣伝されました。
人気を博するようになると、シティオブロンドンの多くの蒸留所では、ロンドンの港で荷揚げされたスパイスやシトラス系のフルーツを直接仕入れてジンを蒸留しました。
1726年までにロンドンには1500もの蒸留酒製造所ができて、第1次ブームと呼ばれるジンの歴史を作ります。
しかし、産業革命の時代を迎えると、粗悪な品質のジンも出回るようになり、職につけない労働者の酒浸りによる社会不安を招くようになるんですね。
18世紀半ばになり、政府はライセンスがない業者をジンの製造・販売から締め出します。しかし、密造酒が横行、質の低下とともにやがてジンのブームは去ってしまいます。
ほとんどの蒸留所や店は閉鎖され、その後シティオブロンドンでは約200年のあいだ、ジンの蒸留が途絶えますが、2012年にシティオブロンドン蒸留所が復活したという流れになるんですね。
近年はさまざまな手法に取り組むクラフトジンが注目されています。斬新なジンもいいですが、少量生産で昔の風味にこだわるのもドライジンの本場らしくていいですね。