「バルメナック カルーンジン(Balmenach Caorunn Gin)」はスコットランドのスペイサイドにあるバルメナック(バルミニック)蒸留所が造っているクラフトジンです。
スペイサイド(Speyside)とはモルトウィスキーの聖地とも呼ばれる場所。大まかにはスペイ川流域ですが、それ以外にも西はフィンドホーン川、東はデヴェロン川、北はモレー湾、南はグランタウン・オン・スペイから東西に延ばした線に囲まれる範囲が該当します。
スペイ川の水源はスペイ湖でハイランド地方を通って、マレー湾に注いでいます。スコットランドではテイ川に次いで2番目に長く、最も急流でサーモンの生育やウィスキーの製造には重要な河川として知られています。
スペイサイドには数十もの蒸留所があり、日本でも有名なマッカランやグレンフィディック、グレンリベットなどのシングルモルトが、この地域で作られています。
なぜ、スペイサイドがこれだけ有名になったのでしょう。その発祥は密造酒時代にさかのぼります。かつて、ここは密造酒のエリアでした。
1707年、スコットランドがイングランドに合併されると、蒸溜酒にかけられる税金が大幅に引き上げられることに。1780年から導入された釜容量税により小さな蒸留釜が認められなくなり、小規模でウィスキーを作っていた人々は密造に走らざるをえなくなりました。
彼らは税金を取り立てる収税人の目の届かない、ヒースと呼ばれる平坦地の荒地であるハイランドやスペイサイドに蒸留所を構えます。
ここにはピート(泥炭)が無尽蔵にありました。ピートとは野草や水生植物などが微生物の働きによって分解して炭素分に富んだ物質に変化した、炭化があまり進んでいない状態の石炭です。
製造業者はピートを原料の大麦麦芽を乾燥させるために使ったのですが、ピートをいぶした香りが麦芽につくことによって、ウイスキー特有のスモーキーな香りが誕生するんですね。
これがモルトウィスキー独特の風味を作りだして評判を呼び、公認のウィスキーより美味しいので役人達まで飲むようになりました。
その後、1824年にスペイサイドにあったグレンリベット蒸留所が政府の公認を取ったのを皮切りに、バルメナック蒸留所でも同年に公認を取りました。
そんなウイスキーづくりの歴史を誇るバルメナック蒸留所が手掛けたプレミアムスコティッシュクラフトジンが、「バルメナック カルーンジン(Balmenach Caorunn Gin)」。
1回の製造で1000リットルということなので、700mlのボトルに1400本ほどでしょうか。
商品名にもなっている「Caorunn(ka-roon)」はゲーリック語で「ローワン」の意味。ボタニカルに使われているスコットランド北部ハイランド産のローワンベリー(ローアンベリー)を象徴しています。
ローワンベリーとは日本名でセイヨウナナカマドと呼ばれる、バラ科の植物です。秋に赤い実がなり、酸味が強いので生よりジャムやゼリー、果実酒に多く利用されます。
ボタニカルはそのほかにジュニパーベリー、コリアンダー、オレンジピールなどの代表的な6種と、クール・ブッシュ・アップル、ヘザー、タンポポの葉、マートル(ギンバイカ)が使われています。
これら11種のボタニカルは蒸溜器の先に接続された1920年代製の「コッパー・ベリー・チャンバー」といわれる4段のボタニカルバスケットで蒸溜されます。
ふわっとした甘みが前面に出ていて、バニラ、オレンジやレモンといったシトラスがほのかに漂ってきます。