ベンロマック10年・スペイサイドなのにアイラ?ウイスキー通に高評価の蒸留所
「ベンロマック10年(Benromach 10 Year Old)」はスコットランド・スペイサイド地域の北西フォレスにあるベンロマック蒸留所が造っているシングルモルトウイスキーです。
「スペイサイドなのにアイラのような香り」と評価する方もいれば、「ニュアンスの違いがあるからそうは感じない」と評価する方もいます。でも、味わいそのものはウイスキー通の方に高く評価を受ける銘柄です。
スペイサイドでありながら、スコットランド産の大麦にピートを効かせているのが特徴で、仕込み水は近くのロマック丘を流れる湧き水を使っています。
ベンロマック蒸留所のこだわりとは
原酒はバーボンバレル80%、シェリーホグスヘッド20%で熟成され、最後の1年をファーストフィルのオロロソ樽で熟成されます。
熟成庫は床が地面というダンネージスタイル。3段までしか樽を積まないというルールが徹底されています。
しかも、ウイスキー製造では珍しい「ソレラシステム」を採用。これはもともとシェリーを熟成させるための独特の仕組みなんですね。
ウイスキー製造では珍しいソレラシステム
ソレラシステムでは新しいシェリーが入った樽から古いシェリーが入った樽までを5段階にグルーピングして貯蔵されます。
最も古いシェリーが貯蔵された樽が「ソレラ」と呼ばれ、ボトル詰めされます。ボトル詰めされると、樽からシェリーが減りますから、その分を2番目に古い樽から補充。
そして、2番目の樽から減った分は3番目に古い樽から補充というように、順番に補填していく仕組みなんですね。
これは生産年や品質を均一化して、安定したお酒を生産するのが目的であり、ベンロマックにおいても10年熟成のうえに、もうひと手間かけられているわけです。
ベンロマック10年の価格と評価
ベンロマック10年は2015年にラベルがリニューアルされています。アルコール度数43度・700mlで、最安値(税込)は記事アップ日の価格で5,000円ほど。
一般的な評価ではGM社が買収するまでのベンロマックの評価はマイナーでしたが、GM社による新生ベンロマックはこれを覆す評価で名声を高めています。
ワールド・ウイスキー・アワードなどの名だたるコンテストにおいて、金賞、優秀賞などを受賞。ニューヨークで開催された世界的な酒類コンペティション「アルティメイト・スピリッツ・チャレンジ2013」でも100点中95点という高得点を獲得したほか、8冠、9冠という受賞歴があります。
一般的な評価では以下のレビューが見られます。
「10年物とは思えない熟成感と、濃厚で深みのあるしっかりとした味わい」「スペイサイドとは思えないピート。ラフロイグほどではありませんが、ボウモア並み。そのあとにシェリー系の甘さが香ります」
「スペイサイドっぽい甘やかな香り。一口飲むとアイラモルトのタールの香り。樽由来のフルーティーな味わい。濃くて美味しい」
終売100プルーフカスクストレングス
ベンロマック10年の種類には「100プルーフカスクストレングス(Benromach 10 Years Old 100 Proof)」もあります。終売となりましたが、旧ボトルがわずかに残っています。
瓶詰めしている10年の度数を、100プルーフ(57度)へと引き上げることにより、原酒のポテンシャルをより濃密に味わってほしいという目的で造られました。
100プルーフは57度・700mlで最安値(税込)は8,100円ほど。一般的な評価では「100プルーフなので、アルコールのアタック感は強いです。ただし、その分通常の10年よりも味わいが強いです」というレビューが見つかりました。
たしかに、スタンダード10年よりこちらを推す方も多いですね。
日本限定シングルカスクやお試し用パックセットも
最後に紹介するのが、ベンロマック2006年日本限定シングルカスク(Benromach Single Cask)という特別リリース。
蒸留年が2006年、瓶詰年が2018年となっていて、通常ラインアップの10年と15年の中間の「12年熟成」の原酒が使われています。
度数は旧ボトルよりも高く、シェリー樽ではなくバーボン樽熟成のため、麦の旨さと果実感、スモーキー感が強く感じられる個性になっています。
ベンロマック シングルカスクは59.9度・700mlで、最安値(税込)は15,000円ほど。一般的な評価では「ピートスモークがストレートに感じられる。まさにシングルカスクの醍醐味」「度数を感じさせない滑らかさのある仕上がり」など。
ちなみに、今回紹介したそれぞれのボトルは1本ではなかなか高価ですが、50mlのボトルや200mlの3本パックセット(10年 ・オーガニック2005・ピートスモーク2008)なども販売されているので、お試しの方にはおすすめです。
ベンロマック蒸留所の歴史
ベンロマック蒸留所は1898年創業後、オフィシャルボトルをほとんど発売せず、ブレンデッド用の原酒を生産してきました。
経営は安定せず、何度か閉鎖をくりかえして1983年にいよいよ生産終了となりますが、1993年にインディペンデントボトラー(独立瓶詰業者)のゴードン&マクファイル社(GM社)によって買収されます。
同社も1896年創業という歴史がありますが、自社の蒸留所を持ったのはこれが初めて。5年かけて大規模な改修工事を行い、ベンロマック誕生100周年にあたる1998年に生産が再開されました。
このとき、チャールズ皇太子が公式な立会いを行い、貯蔵庫に入ると一番目につく手前の樽に皇太子のサインが残されています。
古き良き味わい、伝統の味わいを復元するため、蒸留所の機械化や自動化は最少限に抑えられ、わずか5人のウイスキー職人が発酵から樽詰めまでのすべての工程をこなしています。これからますます楽しみな蒸留所です。