「ブラックニッカ リッチブレンド エクストラシェリー(Black Nikka Rich Blend Extrasherry)」はニッカウヰスキーの宮城峡蒸溜所のシェリー樽原酒による、ブレンデッドウイスキーです。
宮城峡蒸溜所(Miyagikyo Distillery)は宮城県仙台市青葉区にある、敷地面積20万平方メートルの蒸溜所。
同社では北海道・余市蒸溜所の次に建設されました。異なる蒸溜所の複数の原酒をブレンドすることにより、ウイスキーの味わいを高める、バリエーションをもたせるという目的があります。
また、増産もできるため、大手メーカーはこのような体制をとっています。しかも、近年は大規模化しています。
イングランド・ディアジオ社の生産体制の解説>>>「ジョニーウォーカー ワインカスクブレンド」
ニッカウヰスキーの宮城峡蒸溜所には、スコットランドの「ローランド・モルト」のような華やかで軽快なモルト原酒を生み出す目的がありました。
スコットランドのシングルモルトの主要地域(産地)はスペイサイド、ハイランド、ローランド、キャンベルタウン、アイラ、アイランド。それぞれ異なる特徴があるため、個別に味や風味の目安があります。
宮城峡蒸溜所が目指したローランド・モルトですが、かつてはハイランドや島々のモルトに比べると非個性的、軽い、ソフトで魅力に乏しいというネガティブな評価も。
それには歴史的な背景があるんですね。ローランド地方は首都エジンバラやグラスゴーなどを擁する、イングランドにも近い大都市です。
ウイスキー産業が非常に栄えていましたが、スコットランドとイングランドの合併により、蒸留業者への酒税が跳ね上がることになります。
そこでこの重税から逃れるため、蒸留業者はスペイサイドを含むハイランド地方で密造に走ります。しかし、ローランド地方では酒税を取り締まる役人の目が届きやすく、密造が不可能でした。
そこで、同地方の蒸留所は、原料の大麦に比べて安価なトウモロコシなどの穀物を使ってウイスキーを作り始めます。これがグレーンウイスキーの始まりなんですね。
しかし、当時は単体で飲まれることはほとんどなく、蒸留所は衰退。大都市で経済的に恵まれていたために技術革新ばかりに目が向き、伝統技術が廃れていったといった側面もあったようです。
その後、グレーンウイスキーがモルトをブレンドするときの大切な柱となることが発見されて、ブレンデッドウイスキーとともにグレーンウイスキーが注目されるように。
先にネガティブな評価と書きましたが、この地で評価の高い蒸留所はまだ残っています。それがオーヘントッシャン蒸留所。
良質の原料を使い、アイリッシュ・ウイスキーで行われていた3回蒸留を現在でも行っていて、丁寧な工程をたどればローランドでもトップクラスのモルトウイスキーができることを証明しています。
実際に、近年はローランドにモルト蒸溜所が新設されつつあるんですね。ニッカウヰスキーがローランド・モルトを目指して、気候風土がローランドに似通った建設地として選んだという宮城峡蒸溜所。先見の明でしょうか。
「ブラックニッカ リッチブレンド エクストラシェリー」の一般的な評価は個人差はありますが、「シェリー酒の香りはするものの、ほんのり」というレビューが多いですね。
香りに過剰に期待するより、「ピート臭や雑味がほとんどなく、するする飲めるブレンデッドウイスキー」というポイントで購入するかどうかを決めるのがいいと思います。