ウォッカベースのカクテル、りんごもおすすめ
今でもそうだと思いますが、私がバーテンダーをしていた当時、注文が多かったのはウォッカベースのカクテルでした。
ウイスキーやジンではどうしてもベースの風味が強く主張してしまうので、日本人、とくに女性はウォッカベースを好む方が多く見られました。
ウォッカをオレンジジュースで割ったスクリュードライバー、グレープフルーツジュースで割り、グラスの縁に塩をつけるスノースタイルのソルティードッグ、ライムジュースとジンジャーエールで割ったモスコミュール。おなじみですね。
ちなみに、おすすめはウォッカ45mlをアップルジュースで割るだけのシンプルな「ビッグアップル」。良質なりんごジュースがあればおいしいので、ぜひお試しくださいね。
カクテル「ゾンビ」のレシピとは
「ゾンビ」という名前のカクテルが昔からあることをご存知でしょうか?映画「ティファニーで朝食を」でオードリー・ヘップバーンが飲んでいたもの。
名前の不気味な印象とちがって、パイナップル風味のトロピカルテイストのカクテルです。
ホワイトラム 30ml
ゴールドラム 30ml
ダークラム 30ml
アプリコットブランデー 15ml
オレンジジュース 20ml
パイナップルジュース 20ml
レモンジュース 10ml
グレナデンシロップ 10ml
これをシェークして、氷を入れたコリンズグラスに注ぎます。名前の由来は「死人も生き返るほどの強いお酒」。
口当たりがよく飲みやすいけれど、実は強烈なお酒。アルコールだけで100mlも入っていますから、飲むときにはくれぐれもゆっくりどうぞ。
カクテルレシピはBarごとにちがう
Barの種類にも色々なタイプがありますね。よく知られているのは、格式ある正統なバーという意味合いで呼ばれる「オーセンティックバー」タイプ。
また、フレアカクテルショーを楽しめるBarもありますね。お客さんの前でお酒のボトルやシェイカーなどを投げて回すというパフォーマンスタイプ。
また、大勢でサッカーなどのスポーツを観戦しながらお酒を楽しめるスポーツバーもありますし、夜景を楽しむのがメインのBarもあります。
私がバーテンダーをやっていたのは広いフロアーの中に、ボックス席とカウンター席がある「昭和のパブ」タイプのお店。
大学や社会人のコンパブーム、バブル絶頂期あたりで頂点を迎え、そのあとに来たカラオケブームなどに主役を奪われてしまった感もあります。
そのお店はカクテル一杯500円以下ということで、お酒やリキュールの種類にも制限がありました。
めったに出ないお酒だと仕入れをしないというのもありましたし、需要の少ないお酒だと酒販店に在庫がないという時代でもあったからです。当時はネット販売もありませんでした。
たとえば、トム・コリンズをつくるときには本来、オールドトムジン(Old Tom Gin)を使います。しかし、オールドトムジンは当時日本では取り扱う酒販店が少なかったため、ドライジンにレモンや砂糖を加えて代用していました。
お客様におことわりしてからつくっていましたが、シェークしなければなりませんし、本来とは味が変わってしまいますよね。
つまり、できあがりは限りなくジンフィズに近い味。いえ、そのもの。長いコリンズグラスで出すので、気分だけはトムコリンズ(笑)。
そのほかにも、ココナッツミルクの在庫はありませんでした。理由はココナッツミルクを使うカクテルの注文がほとんどなく、使っても残りがいたんでしまうからです。そこで、牛乳にアーモンドリキュールを入れて代用していました。
お店の事情やバーテンダーの個性が反映される
このように、カクテルレシピはお店の事情によって変わってきます。このほかにも、オーナーの好みやカクテルの料金によっても味は大きく変ります。
また、バーテンダーのこだわりもありますね。個人的な話ですが、私は店から受け継がれたレシピだとちょっと甘すぎると感じていたので、甘いカクテルを注文された場合にはお客様に甘さの好みをお聞きして調整していました。
そういうところも個人の裁量に任されていたのも、ありがたい環境でした。お店はいまはありませんが、叶うならあのカウンターにもう一度立ってみたい気がします。