カネマラアイリッシュウイスキーオリジナルと12年の特徴と評価
アイリッシュウイスキー「カネマラ(Connemara)」の種類から人気のオリジナルと12年の特徴、定価と通販価格、口コミ評価などを紹介します。
カネマラはアイルランドのラウス州クーリー半島にあるビームサントリー傘下のクーリー蒸溜所が造っているピーティッドタイプのシングルモルトウイスキーです。
カネマラの特徴はモルト原酒にピート香を付けていること、さらに、製造法もアイリッシュ伝統の3回蒸留ではなく、2回蒸留。
また、グレーンウィスキーの製造法はアイルランド方式ではなく、スコッチ方式なんですね。
それもそのはず、もともとアイラモルトで有名なラガヴーリンとラフロイグを意識して造られたのだとか。
とはいえ、ピート香のフェノール値はアイラモルトより低くておだやかです。
ノンエイジタイプのオリジナルはバーボン樽で熟成された4年、6年、8年の原酒によるブレンド。少量生産の12年は12年以上熟成した原酒がヴァッティングされています。
煙たい香りとバニラやハチミツの甘み、ダークチョコレートのビターさと植物っぽい独特の苦味が魅力で支持する人も多いのですが、レビュー評価ではオリジナルと12年の違いがわかりにくいという感想もありますね。
カネマラオリジナルと12年の定価と通販価格
カネマラオリジナルはアルコール度数40度・700mlで、定価の目安となるサントリーの希望小売価格は税別4,200円。
2021年10月11日時点での販売店での価格は税込2,800円ほど。ここ1年ほど値段の変動はありません。
カネマラ12年はアルコール度数40度・700mlで、定価の目安となるサントリーの希望小売価格は税別9,700円。今日現在の販売店での価格は税込7,000円ほど。
実売価格は定価より安いのでお買い得ではありますが、レギュラーボトルと12年では倍以上の価格差がありますね。
カマネラをテイスティング・ノンエイジでも十分な味わい
カネマラオリジナル、つまりノンエイジのほうをテイスティングしてみましたが、こちらでも十分おいしく楽しめました。
開栓してみると香りはアイラモルトと同じ。ストレートはラフロイグのような力強さがありますが、アードベッグのような甘味もあります。
両者を足して2で割ったような印象ですが、原酒にスコッチにはないアイリッシュ独特のすっきり感があります。
ちょっと薬っぽい後味もありますが、気になるほどではありません。ハイボールにしても個性が消えない強さがあるので、アイラ系が好きな方なら飲み続けても飽きがこないかと思います。
試しにカネマラオリジナルのあとにラフロイグを飲んでみると、カネマラのほうがピートが弱めで、炭っぽいタイプであるのがわかります。
いずれにしても12年を選ばなくても、こちらで十分満足できそうな逸品です。価格的にもコスパはかなりいいのではないでしょうか。
カネマラオリジナルの一般的なレビュー評価
ノンエイジの一般的な評価からまずはマイナス評価を指摘する感想です。
「常飲するほどではない。やや中途半端。ピーティがよければ普通にアイラモルトでいい」
「アイラ系に比べてスモーキーさは抑え目。仄かな甘さ、凄く上品な酒。でも、少しインパクトは足りず物足りない」
支持するレビューは以下の通りです。
「ベースにある豊かな味わいがこのウィスキーの素性の良さを感じさせてくれます。この価格帯ではひとつ抜けた美味しさ。この価格帯ではひとつ抜けた美味しさ。プレゼント用にも喜ばれそう」
「口に含むと、甘やかでフルーティな味わいから徐々にまろやかなピート香が膨らんでゆき、後味はドライで、舌にほんのり甘みと煙さが残る」
「ラフロイグやアードベッグほどキツくもなく、ボウモアよりもスモーキー」
カネマラオ12年の一般的なレビュー評価
カネマラオリジナルと12年の両者を飲み比べたドイツからのレビューでは、味わいは支持されていますが、価格面で疑問というレビューもいくつか見られます。
やはり、私と同じ感想を持つ方もいらっしゃるようですね。以下は12年に関する
「コネマラピーテッドシングルモルトと12年を試してみた。12年はスモークとピートのノートにもかかわらず、非常に穏やかでバランスの取れた良いウイスキー。しかし、オリジナルとの違いはごくわずか(ドイツ)」
「12年はアイラほどではないが、はっきりとしたスモーキーさがある。しかし、深さが欠如。価格からすれば私はもっと望んでいた。深みではスコットランドがおそらく一歩先を行っている(ドイツ)」
「欠陥のない品質のある飲み物だが、スモークが支配的なフレーバー。滑らかで穏やかなアイリッシュウイスキーを飲みたい気分なら、購入しないこと。ボトルを購入する前にバーで注文することをお勧めする(スペイン)」
倍以上の価格差では評価は微妙というところでしょうか。売れ行きはオリジナルが圧倒的というのもこのあたりの理由からかもしれません。
カネマラシングルモルトの種類
アイリッシュウイスキー「カネマラ(Connemara)」の種類にはこのほかに、ファーストフィルのバーボン樽のみでの熟成、4000本限定販売された22年があります。
さらに、シェリー樽熟成とバーボン樽熟成の原酒をヴァッティングして造られた数量限定の「ディスティラーズエディション(Connemara Distillers Edition)」。
通常のカネマラよりもピートを強く焚いた麦芽を使用した「カネマラターフモア(Connemara Turf Mor Peated)」があります。
ちなみに、「Turf Mor」とはゲール語で「Big Peat」を意味します。免税店向けにリリースされたボトルですが、通販でも購入できます。
クーリー蒸溜所の歴史と製造工程の特徴
クーリー蒸溜所ではカネマラのほかにシングルモルト「ターコネル」、ブレンデッド「キルベガン」、シングルグレーンなどを造っています。
クーリー蒸溜所のあるところは、もともとスピリッツやアルコール燃料を製造する国営工場。正確にはジャガイモの蒸留工場で、蒸留液が蒸留酒、消毒液、燃料などに使われていました。
1987年にこの工場を買収したのが、創業者のジョン・ティーリング氏。アメリカ・ハーバード大学で祖国アイリッシュウイスキーの歴史研究を経て、アイリッシュブランドの再興をめざします。
ポットスチルを設置して、1989年からウイスキー製造を開始。新しい蒸溜所ではのちに「アイリッシュの革命児」と呼ばれるさまざまな新しい試みが次々と製造工程に活かされてきました。
アイリッシュウイスキーではかつてピートを焚いていた
一般にアイリッシュウイスキーは未発芽の大麦と麦芽の両方を原料に使用、3回蒸溜をおこないます。しかし、カネマラは未発芽大麦を使用しないため、麦芽100%。
麦芽100%では一般的にはアイリッシュにありがちなオイリーさがなくなり、非常にウェットでスムースになると言われています。
近年、アイリッシュでもカネマラのようなピーテッドシングルモルトが出ていますが、アイリッシュウイスキーの歴史をたどると、もともとはピートを焚く製法でした。
ブランド名となっている「カネマラ」とは「コネマラ」とも訳されます。
「アイルランド西部ゴールウェイの北西にあるコネマラ国立公園として知られる地。入り組んだ海岸線や湖に囲まれていて、かつてはピートの採掘場所で有名でした。
それが、19世紀にアイルランドのウイスキー産業が盛んになると、ピートを燃料とした小規模生産から、石炭や木材を燃料とする大規模生産にシフトしたため、ピートを焚かなくなったんですね。
「カネマラ」はこのような原点にもどった製法と、当時への懐古を込めて名付けられています。
クーリー蒸溜所ではモルトウィスキーとグレーンウィスキーの両方が製造されていますが、その製造法でも従来とはちがった取り組みが行われています。
2回蒸留とスコッチ方式のグレーンを使用
たとえば、伝統的なアイリッシュとして有名な「ジェムソン」を造るミドルトン蒸留所では、原酒の滑らかさを倍増させるという理由から3回蒸留を伝統としています。
しかし、クーリー蒸溜所では3回蒸留すると香りが失われるという考えから初溜、再溜の2回蒸留。
また、グレーンウィスキーの製造法は一般的なアイルランド方式ではなく、スコッチ方式。
アイルランドでは通常グレーンウィスキーは「モルトウィスキーとブレンドしたもの」がグレーンウィスキーとして扱われています。
それがクーリー蒸溜所ではスコッチと同じく、グレーンウィスキーのみで造っています。
そのため、ウイスキーを飲みなれた人からは「アイリッシュの個性が少なく、スコッチでもない」という微妙な風味が指摘されるんですね。
でも、あれとも違う、これとも違うと感じながら、やっぱりこれはアイリッシュなんだなという印象を楽しめる銘柄となっています。