ダルモア12年 蒸留所のある地名の意味とは
「ダルモア12年(Dalmore 12 Years Old)」はスコットランド・ハイランドにあるダルモア蒸留所が造っているシングルモルトウイスキーです。
ダルモア蒸留所は1839年、北ハイランドのインヴァネス(駅)からバスで30分ほどのアルネスのクロマティー湾の入り江沿いに、アレキサンダー・マセソンによって創業されました。
ダルモアの意味は「川辺の大草原」を意味するゲール語からきています。その名の通り、地元は大麦生産に向いている豊かな土壌が広がっています。
風味の特徴を決める製造工程
同蒸留所には形状も大きさも非常にユニークなポットスチルが8基。初留釜はランタン型のヘッドに、上部を平らに切ったT字型をしています。
また、再溜釜のネックの外側にはウォータージャケットという珍しい冷却装置が巻かれています。ウォータージャケットとは、もともとシリンダーの周囲に設けられた冷却水の水路で、冷却水を通過させて過熱を防止するためのものなんですね。
これを再溜釜にとりつけて、ジャケットを流れる冷却水の水量をコントロールすることで、スピリッツの還流率を変えられるように設計されているのだとか。
つまり、重い成分をもった蒸気を釜に戻し、内部で液体が常に沸騰と凝縮を繰り返している状態を作り出すことで、ダルモア特有のクリーンで豊かな風味が生み出されるわけです。
さまざまな種類の熟成樽を使い分けて個性を出す
一般的に多くの蒸溜所がバーボン樽とシェリー樽を使いますが、ダルモア蒸留所ではマディラ、マルサラ、ポートワインの樽など、さまざまな樽を使うのも特徴です。
とくに、シェリー樽はシェリーの名門「ゴンザレス・ビアス社」から、甘口オロロソのマツサレム30年などの熟成に使用した樽の提供を受けています。
そのため、甘くてフルーティな香りと柔らかい口当たりで、スモーキーさの少ない仕上がりになっています。
ダルモア12年のおいしい飲み方
ダルモアはトゥワイスアップで加水するとおいしくなる、と評価する方も多いですね。ストレートで味わいたくても、きつく感じてなかなかできないという方はぜひお試しを。
氷なしで2倍に割ってみたり、あるいはストレートから徐々に少量の水を加えてみると、スペイサイドモルトに近い味わいのフルーティな甘みをより意識して楽しめます。
ちなみに、ダルモアの種類に「グランレゼルヴァ」があります。シガーとの相性を考慮して造られたウイスキーなので、シガーの愛好家向きです。
価格と一般的なレビューの評価
ダルモア12年はアルコール度数40度・700mlで、最安値(税込)は4,800円ほど。現在のボトルはずんぐりタイプですが、一般的な細長いボトルの旧ボトルもあります。
一般的な評価からまずはマイナスポイントですが、とくに指摘はなくちょっと減点という方が少数。贈答用の方で「相手の方には喜ばれたけれど、自分で飲んでいないのでその分、減点」という方、けっこういます(笑)。
支持するレビューには「メープルシロップ、梅酒や黒糖のような豊潤で甘い香り」「口当たりが優しく香り高い。シングルモルト好きにオススメ」「苦手なドライさやウッディさがまったくなくてスーッと飲めます。その後、深みのある甘みが広がり余韻も素敵」「シェリーの香りが豊潤で甘みの強いお酒。女性向かも」など。
そのほかに「箱がかっこよくて良かった」「ボトルに惹かれて購入」というように、ジャケ買い評価の高いのもダルモアならでは。画像も絵になりますね。
ダルモア蒸留所の歴史と牡鹿の紋章の意味、キーモルト
ダルモアのシンボルに「牡鹿の紋章」が使われるようになったのは、2代目オーナーの地元のマッケンジー兄弟時代。
古くから周辺の山は鹿撃ちの名所として知られていましたが、さかのぼること1263年、時のスコットランド国王・アレキサンダー3世がこの地を訪れたことがきっかけでした。
国王はハンティング中に雄ジカの角で負傷。そのときに雄鹿を槍で仕留めて国王を救出したのが兄弟の祖先であるクラン・マッケンジー氏。
その謝意として牡鹿の紋章が与えられ、以来、メインラベルの象徴となっています。ゴードンジンの紋章「猪」の由来と似ていますね。
ちなみに、2代目オーナーのマッケンジー兄弟は、ホワイト&マッカイ社の創業者と親交があり、1960年にダルモアと同社は合併。
ブレンデッドウイスキー「ホワイト&マッカイ」のキーモルトとなっています。その後、数々のオーナーの変遷を経て、ダルモア蒸留所はフィリピンのエンペラドール社に買収されています。