「Dry Ginドライジン」は現代ではもっとも一般的なジンで、カクテルにも多く用いられています。
1660年、オランダで薬用酒「ジュニエーブル」として開発された蒸溜酒は、当時の単式蒸溜器(ポットスチル Pot still)でつくられていました。
当時の製造法は原料の風味が強く残るものの、雑味が多く残ってしまうのが欠点でした。そこで「Old Tom Gin オールド・トム・ジン」のように砂糖を加えて造られていました。
また、ドイツではシュタインヘーガーのように生のジュニパーベリーを発酵させて蒸留することによって、糖度を増して飲まれていました。
19世紀はじめになると、連続式蒸溜機(パテントスチル Patent still)の登場により、雑味の少ないドライジンが生まれます。
連続で蒸留できる技術でドライジンだけでなく、ウォッカ、ウイスキーなどの製造にも使われました。
原料の香りは目立たないものの、高純度でクリア、キレのあるお酒が大量生産できるようになり、ライトな風味のジンはブリティッシュ・ジンやロンドン・ドライジンと呼ばれ、生産量もオランダをしのぐようになっていきます。
近年のクラフトジンにおけるドライジンは、単式蒸溜器で浸漬法(ボタニカルをスピリッツに直接漬け込んでから蒸留)とバスケット法(蒸留の際にボタニカルが入ったバスケットに蒸気を通して風味づけをする)を併用するハイブリッド法も登場して、必ずしも連続式蒸溜機だけでドライジンが製造される時代ではなくなりました。
また、蒸留技術も進んだため、単式蒸溜器ならではの個性を活かした質の高いドライジンの製造もクラフトジンでは見られるようになっています。
たとえば、減圧蒸留の技術。単式蒸溜は90℃~100℃の沸点で蒸留させる「常圧蒸留」が通常ですが、このほかに減圧蒸留という製造法も見られます。
標高が高い山などは気圧が低いですが、このような場所でお湯を沸かしたとき、低い温度で沸騰します。この原理を利用して行うわけです。
減圧蒸留は100℃より低い温度で沸騰させるため、沸点の高い雑味などを含まない原酒を造れる利点があり、焼酎など、ジン以外の蒸留酒でも導入されている技術です。
蒸留技術のほかにもボタニカルで香りづけする前のベーススピリッツ(原酒)にウォッカを使ったり(FAIR.Gin フェアジン)、りんご(Le Gin de Christian Drouin ル ジン クリスチャン・ドルーアン)、日本酒(和GIN)、高級焼酎(YUZUGIN油津吟)を使ったりという工夫で個性を出すクラフトジンが増えています。
蒸留技術、ベーススピリッツとともにボタニカルも蒸留所のある土地の風土を活かしたものが使われていて、その地域に根ざした個性的なドライ・ジンがたくさん生まれています。