エギュベルジン・リキュール製造で著名な修道院とは
「エギュベルジン(Eyguebele Gin)」は南フランスのプロヴァンス地方にあるトラピスト派エギュベル修道院で造られているジンです。
修道院がジンづくりをするのを日本に置き換えると、お寺で焼酎を造るようなものかもしれません。ちょっと違和感があるかもしれませんが、ヨーロッパでは珍しいことではないんですね。
宗派によってちがいますが、多くの修道院では飲酒は禁止ではなく、厳しい修行の活力剤として作られていました。
そして、修道士の健康維持のためにつくられたのが薬用酒づくりだったんですね。
エギュベルジンの特徴
エギュベルジンはジャニパーベリーを中心にカモミール、アンジェリカ、コリアンダーなど、ジンの王道といえるボタニカルを使っています。
しかし、ドライジンではあるものの、男性的な辛さ、アルコールの刺激、薬っぽい風味がなく、バラの花に例えられる香りとほのかな甘さが特徴です。
そのため、辛口ドライジンが苦手な人や女性にも好まれやすいようですね。ジン自体の香りと甘みを楽しむために、カクテルにしないでシンプルな飲み方を好むファンも多く見られます。
価格とレビューの評価
エギュベルジンはアルコール度数40度・700ml。あくまでも記事アップ日の価格ですが、最安値(税込)は2,200円ほど。
一般的な評価から、まずはマイナスを指摘する感想としては「ボトルデザインが残念。(リニューアル)前の方が高級感があって好きでした」「カクテルにはあまり向かないかな」など。
支持するレビューには「飲む瞬間、上品でさわやかな香りが立ち、舌に刺激が来た後、甘くて華麗な味が広がります」「何も足さずにそのまま冷凍して飲むのが一番」「mixiのコミュで知って買ってみたら、本当に美味しかった」などの感想が見られます。
少しだけ水を足すと、香りが出てきやすいのでおすすめです。
エギュベル修道院の歴史
エギュベル修道院のリキュール造りは、1239年ベネディクトゥス・デ・ヌライエ修道士のエリクシール・ド・ヴィを基本として、18世紀半ばにジャン神父がレシピを作り上げたのに始まります。
同修道院はエギュベル蒸留所として、少量ながら多くの植物からなるリキュールを作りはじめます。
1930年代になり、ビルヌーブ・ド・ベールに拠点を置くアルディシュの蒸留所であるドルーズ社に買収されて、新たな転機を迎えることに。
植物系の強いアペリティフ(食前酒)の製造をしていたドルーズ蒸留所から、植物の組み合わせや砂糖を使ったリキュールの製造法をマスターして、さらに発展していきました。
アプリコット・ジョーヌ・カカオ・ベルモットの製造へ
1950年代からは「フルーツとハーブのスペシャリスト」として果実や植物をベースとするシロップを多く製造。現代でも人気のアプリコット・ジョーヌ・カカオ・ベルモットといったリキュールの出発点ですね。
ちなみに、エギュベルのオールドボトルの表記は「Aiguebelle」。現在の綴りは「Eyguebell」とは違っています。
Aiguebelleとは「美しい水」という意味から名づけられた土地名であると同時に、エギュベル修道院の守護天使の名前でもあります。
この綴りを変えたのには理由があるんですね。1980年代後半、エギュベル蒸留所は、ある企業からのリキュールの大量発注に応えるために設備投資などを行ったのですが、発注元が倒産してしまいます。
そして、エギュベル蒸留所も連鎖倒産。その後、別の企業の傘下に入ることでレシピは引き継がれ、同じレシピとノウハウにより、シロップやリキュールは製造されています。
しかし、このときに聖人の名前である「Aiguebelle」は使用できなくなり、Aigueと同じ意味のプロヴァンス語「Eygue」に変わって、現在のEyguebelleとなったんですね。
お酒で得た利益はトラピスト派の慈善事業のために使われているそうですよ。