キリンウイスキー富士山麓樽熟原酒50度が販売終了から終売
「キリンウイスキー富士山麓樽熟原酒50度(kirin Fujisanroku Tarujukugenshu)」は、キリンディスティラリー富士御殿場蒸留所で醸造されたウイスキーを使ったモルトウイスキーとグレーンウィスキーをブレンドして作られたブレンデッドウイスキーです。
ジャパニーズウイスキーの需要はここ10年あまりのうちに急激に高まってきたため、生産が追い付かない状況です。
その結果、10年以上の長期熟成原酒の製品化が抑えられたり、生産中止になったりして商品の高騰が進みました。
キリンの「富士山麓ブランド」のなかでも人気の高かった、通称白ラベル「富士山麓樽熟原酒50°」にもその波がやってくることに。
白ラベルの終売理由は原酒不足による供給困難
白ラベルは同社の国産ウイスキー事業で売り上げの30%以上という主力商品でしたが、2019年春で販売終了、終売となってしまったんですね。
終売の理由は「想定を超える需要から、製造に必要なモルトウイスキーとグレーンウイスキーの原酒の安定供給が難しくなった」というものでした。
後発の「富士山麓シグニチャーブレンド」の販売は続けられています。
富士山麓樽熟原酒50°の価格高騰の推移、最安値は?
もともと富士山麓樽熟50°は2005年9月に発売され、2016年3月に富士山麓樽熟原酒50°と改訂されて、ノンチルフィルタード製法(後述)が採用されました。
このとき、旧ボトルの容量は600mlから700mlに変更となり、それまであった4.0Lペットボトルが廃止されたんですね。
富士山麓樽熟50°の定価の目安となる参考小売価格はキリンビールにはすでに情報がありませんが、「本格的なウイスキーを低価格で」というコンセプトで造られていただけに実売価格は1,000円くらいだったと思います。
それがやがて1,300円、参考小売価格の値上げもあって1,700円くらいまで上がり、販売中止の現在は通販販売店の最安値でも2,800円前後まで高騰しています。
品薄はますます進み、後継商品、代替商品はないようなので、ファンの方は在庫があるうちに早めに確保しておいたほうがよさそうですね。
富士山麓樽熟原酒50度の口コミ評価・飲み方は
富士山麓樽熟原酒50度はアルコール度数50度・700mlで、今日現在の最安値は先ほども書きましたが2,800円前後。
一般的な評価では「うまい」「おいしい」という口コミが多数ですが、マイナスを指摘する感想も少しあります。以下の通りです。
「製品ムラが有ると思われる」
「わたしには香りや味が濃過ぎた」
「50%というのも関係あるのか、アルコール臭く感じました」
「度数高くてコスパも良いのですが、そんなに争って買うもんでもないかと」
「口当たりは荒々しい」
「ストレートだとアルコール感が強く、風味も単調な味わい」
支持するレビューには上と反対の感想もあります。
「口当たりはなめらか。口を開けた直後は樽の香り。しばらくするとバニラ風味の甘い香りもする。味もかなり甘い」
「50度と言っても癖がなく飲みやすい」
「バーボンに似た味わいのウィスキー」
「雑味少なめ。程よい香り。濃いめのハイボールに最適」
「程よく鼻から抜けてゆく甘い香りと、ガツンとくる強さが癖になる銘柄」
個人的にも初めて飲んだときには開栓直後の樽の香りが、心地よかったのを覚えています。
ストレートで少量口にしてみても、50度を感じさせないくらいの飲みやすさで、樽香の好きな人にとってはコスパの高いブレンデッドだと感じました。
たしかに、樽熟成の深みや複雑さには欠けるシンプルな味といった印象ですが、樽の香りやバーボンを思わせる香味が楽しめます。
レビューにもありますが、飲み方はこの個性を活かせるようにハイボールなら濃いめが合いますね。
富士御殿場蒸溜所とは
キリンビールの富士御殿場蒸溜所は、キリンビールが1972年に米シーグラム社、英シーバスブラザーズ社と合弁会社をつくって設立した蒸溜所で、静岡県東部の御殿場市にあります。
ここは仕込みからボトリングまでを一貫して行うという、世界でもあまり類を見ない蒸溜所。
モルトウイスキーだけではなく、世界的にも珍しい3種の蒸留器を使って、多様なグレーンウイスキーもつくっています。
富士山麓樽熟原酒50度の特徴
「キリンウイスキー富士山麓樽熟原酒50度」の特徴は、大きくあげて2つ。ひとつは樽熟成した原酒をそのまま使っていること。
モルト原酒のアルコール度数を50度、グレーンウイスキーの一つにはバレル(180L小樽)熟成させたアルコール度数55度の原酒を使用して、ブレンドした原酒が50度になるように調整されています。
熟成に使われる樽は蒸溜所ごとの伝統やこだわりがありますが、一般的に使われるのはバッツ樽(約500リットル)、ホッグスヘッズ樽(約230リットル)。
しかし、富士御殿場蒸溜所では小さなバレル樽(約180リットル)を使っています。
小樽は原酒と樽の触れ合う表面積が大きくなるため、樽の香りと色を十分に抽出できる利点があるんですね。
その小樽は北米産のホワイトオーク材で、バーボンウイスキーやスコッチウイスキーの熟成に使われた古樽。
木の生臭さや雑味が原酒に移らないように、内側が焦がされています。
樽が小さくなればなるほど、樽の数は多くなり手間も増えるのでたいへんですが、樽熟原酒をそのまま使いたいという理由があるからなんですね。
一般的にウイスキーはアルコール度数60度以上で樽詰めされ、熟成、ブレンドされたあと、びん詰めのときに製品のアルコール度数まで水でうすめて調整されます。
このとき、アルコール度数が急激に下がるわけですが、溶け込んでいた香味成分が分離して出てきてしまう現象が起きてしまいます。
でも、樽熟原酒そのままなら心配ないわけですね。
特徴のふたつめは「ノンチルフィルタード製法」。
くわしくは下の記事で解説しているので省きますが、冷却ろ過を行わずにびん詰めする方法でうまみ成分を逃がさない製法のことです。
ふたつの特徴で個性を出している富士山麓樽熟原酒50度。
販売終了でシグニチャーブレンドを代替品にするには高価格ですし、「オークマスター樽薫る」も低価格で販売されていますが、こちらは度数40度で風味も別物という印象ですね。
再販はあるのでしょうか。