グレンキンチー12年 老舗蒸留所のエジンバラ・モルト
「グレンキンチー12年(Glenkinchie 12 Years Old)」はスコットランドの首都、エジンバラから20マイル(約32km)にあるグレンキンチー蒸溜所が造っているシングルモルトウイスキーです。
ローランド地方に現存する数少ない蒸留所のひとつで、設立は1837年。ローランドの蒸留所は20世紀末にはオーヘントッシャンとこのグレンキンチーのわずか2か所になりました。
とはいえ、ローランドにも復活の兆しは現れていて、近年のブラドノック蒸留所復活を皮切りに新蒸留所が次々と建造されているんですね。
グレンキンチー12年の価格と風味のレビュー評価
グレンキンチー12年はアルコール度数43度・700mlで、あくまでも記事アップ日の最安値価格ですが、通販販売店では税込3,200円ほど。
このブログで初めてグレンキンチー12年を紹介した、2018年11月下旬の最安値価格が税込3,300円ほどだったので価格推移もなく、安定して購入できる銘柄です。
一般的な評価からまずはマイナス評価を指摘する感想をあげてみます。
「美味しいウイスキーだが、私には少し甘すぎて甘さが口に残る。好みは分かれるかも」
「12年43度で3300円は安い。ただ激戦区の12年の中では普通」
「思った以上に刺激を感じた。グレンフィデック、グレンモーレンジと比較して香りよりも刺激が強い」
「クセのあるウイスキーが好きなせいか、また飲みたいと言うほどのインパクトを感じられなかった」
「たくさんの前向きなコメントがあるが、ボトルを開けた後は不快な臭いがした。かなり柔らかい味だが、第一印象ですべてが台無し。私は運の悪い1本のボトルだったのかもしれない(ドイツ)」
支持するレビューは以下の通りです。
「口にふくんだ瞬間の甘さ、辛さ、スモーキー具合はジャパニーズウィスキーに似ている」
「甘い香りと軽やかな飲み口で女性でも飲みやすい」
「甘さと重厚感があり、12年物の中でもトップクラス」
「癖が少なく飲みやすく、コクがあるスコッチを求めて飲み比べてきた。自分にはこれが一番」
「濃厚なウイスキーとは対極に位置する味わいだが、これも一つの完成形」
「丸くて柔らかく、少しだけ苦い樽感を味わうこともできる。10年との共通点はほとんどない(ドイツ)」
「父へのクリスマスプレゼントを探していて、エジンバラのバーテンダーから紹介された。とても滑らかで、お金に見合う価値がある(英国)」
「プラム、ナシ、リンゴを味わえて、スパイシーさもある。スターターウイスキーとして適している(ドイツ)」
グレンフィデック、グレンモーレンジ風ともいわれますが、突出した個性がない分、クセのあるウイスキーが好きな方にはインパクトが薄いかもしれません。
しかし、安定した味わいが好みとぴったり合えば、価格とのバランスもいい究極の一本となるのでしょう。
グレンキンチー12年のおいしい飲み方
フルーティーさを楽しむために、基本的にはストレートまたはロックでいただくのがいいと思いますが、食前酒、食中酒、最初の一杯として飲む方も多いですね。
食事中ならハイボールでさっぱり飲むのもいいですが、スモーキー加減が弱くなります。苦みも楽しみたい場合はちょっと濃いめがおすすめです。
グレンキンチーの意味と由来
グレンキンチー蒸溜所はエジンバラでは唯一残っている蒸留所ということもあり、別名「エジンバラ・モルト」とも言われます。
大麦畑に囲まれたのどかな風景の中にあり、ほとりにはキンチー川が流れます。「グレンキンチー(Glenkinchie)」とはこの川に由来していて、「キンチー川が流れる谷」という意味。
キンチー川のKinchieの語源は、かつてこの地を所有したド・クインシー家(de Quincey)の家名からきていると言われます。
ローランド地方はもともと農業の中心地。蒸留所のまわりにも大麦や小麦、じゃがいも畑などが並んでいて、グレンキンチー蒸溜所も農家の副業として設立されたものでした。
麦芽の搾りかすや蒸留廃液は家畜の飼料に利用され、グレンキンチーで飼育されたアンガス牛は肉質のよさで評判だったとか。
現在はMHDモエヘネシーディアジオ社が所有
スコットランドの詩人、ロバート・バーンズはこの地を評して「私が見た中で、最もすばらしくみごとな麦の地(corn country)」と呼んでいます。
イギリスでcornはトウモロコシだけでなく、麦を表す場合もあります。おそらく、この地の大麦を示しているのでしょう。
蒸溜所は1853年に閉鎖されますが、その後、オーナーが変わり、操業を再開。何度かオーナーが変わり、現在はMHDモエヘネシーディアジオ社が所有しています。
ジョニーウォーカー、ヘイグ、ディンプルなどのキーモルト
グレンキンチー蒸留所では年間250万リットルものウイスキーを生産していますが、シングルモルトとしてボトリングされるのはそのわずか10%ほどだとか。シングルモルトウイスキーの販売もごく最近の1988年に始まったばかり。
原酒のほとんどはジョニーウォーカー、ヘイグ、ディンプルなどのブレンデッドウイスキーのキーモルトとして使われています。
とくにディンプルではグレンキンチーが中核をなすメインのキーモルトとしてブレンドされます。
特徴は硬水・発酵槽・大きいスチルによる個性
製造工程の特徴はウイスキーの仕込み水に硬水を使っていること。スコットランドでは通常、軟水を使うのが特徴です。
水源になるのはラマルミュアーの丘にある泉。以前はキンチー川の水をそのまま利用していましたが、農業汚染が心配されるために近年はラマルミュアーの泉に切り替えたとか。
さらに、昔ながらのオレゴンパイン(オレゴン松)製のウォッシュバック(発酵槽)を使っていること。
オレゴンパインの発酵槽は、蒸留所内に住んでいる乳酸菌などの微生物が繁殖しやすい効果があります。それらの働きによる乳酸発酵により、独特のフルーティーな香りと味わいが生まれます。
スチルはランタンヘッド型の初溜釜1基21,000リットル、再溜釜1基17,000リットルというクラシックなスタイル。
どちらもバルヴェニーやグレンファークラスと並んで、スコットランドで最も大きいスチルの仲間に入ります。
グレンキンチーの10年・24年やダブルマチュアードなども紹介していますので、参考にしてくださいね。