イチローズモルトホワイトラベル700mlの特徴と飲み方
「イチローズモルト&グレーンホワイトラベル(Ichiro's Malt&Grain World Blended Whisky WHITE LABEL)」は埼玉県秩父市の山中にある、ベンチャーウィスキー社・秩父蒸留所(CHICHIBU Distillery)が販売しているブレンデッドウイスキーです。
秩父蒸留所のウイスキー原酒をキーモルトに、合計9つの蒸留所のモルト原酒と2つの蒸留所のグレーンウイスキーが使われています。
風味の特徴は「フルーティさの中に軽く甘い香りが漂う、爽やかなタイプ」。
秩父蒸留所の原酒がキーモルトとはいえ、ブレンデッドなので大人気のシングルモルトと比べてブレンダーの手腕が問われる銘柄です。
飲み方ではストレート、ロック、さらに水1・ウイスキー1の氷なしというトワイスアップが好まれます。
とくにトワイスアップは本来の柔らかく、フルーティーな味わいとともにミズナラ樽の香りも引き出せて楽しめます。
ハイボールはさっぱりしすぎると感じるかもしれませんが、後述のテイスティング評価でも触れているように、スモーキー感も楽しめます。
イチローズモルトホワイトラベルの定価と価格推移
イチローズモルトホワイトラベルはアルコール度数46度・700ml。このサイトで初めてイチローズモルトを紹介したのは2020年4月下旬でしたが、当時のメーカー希望小売価格は3,850円税込。
それが、2023年3月13日の時点では、流通価格が安くても5000円前後からになってしまうようですね。
定価で買えるかどうかは運次第ですが、私はたまたまイオンで最後の一本になった定価のボトルを手にすることができました。2年に1度の幸運。
埼玉県秩父市のふるさと納税(20,000円)の返礼品のリストにもなっていますが、2023年3月13日の時点では大人気・品切れの表示が出ています。
ホワイトラベルをテイスティングしてみました
ホワイトラベルをテイスティングしてみました。個人的な評価で失礼します。まず香り。鼻にツーンと来ない繊細でフローラルな香り。味わいは大丈夫?と思わせながらも、ストレートを味わえば、草原の花の蜜のような上品な甘さ。
べたつきのある甘さですが、蜂蜜の一歩手前の抑え気味の味わい。それからすぐにじわっとミズナラの樽感を感じるような重い酸味がきます。この酸味が強く口に残るのですっきり目の飲み終わり。度数46度を感じさせませんね。
ハイボールではあれっ?と思うくらいスモーキーさが顔を出してきて、 驚かされます。軽快な味わいのようで実はしっかりと複雑さもあります。
飲み終わりも甘さと酸味のバランスが何とも絶妙。最初の印象は弱めでしたが、飲み方によっていろんな表情が出てくるのはなかなかありません。
味わいの凹凸がしっかりと心得られていて、計算されているなと感じました。ブレンデッドでここまでやるとは、恐れ入りました。
でも、これはブレンドの技術が素晴らしいわけで、ホワイトラベル=イチローズモルトの評価と考えてはいけませんよね。まあ、これは価格安めのサービスボトルという位置づけでしょうか。
やっぱり、秩父蒸溜所オリジナルのモルトを味わってこそかも。でも、上級品は高くてなかなか手が出ませんよね。
イチローズモルトホワイトラベルのレビュー評価
イチローズモルトホワイトラベルの一般的な評価から、まずはマイナス評価を指摘する感想をあげてみます。
「可もなく不可もなし。個人的にはもう少しピートが効いている方が好き」
「値段が高い」
「グレーンの味が強い。キリン富士山麓と同等の味。ならば、富士山麓の方がコスパが良い」
「香りや味の中にミズナラのモルトも感じられたが、やはりシングルモルトとは違う。イチローズモルトの真髄はモルト100パーセントにある」
「香りは良いがまろやかさはなく、舌に突き刺さるように痛く、刺激が強い」
「純粋なイチローズモルトとは違う。同社の他のラベルよりも価格は手頃だが、味は大きく下回る」
支持するレビューは以下の通りです。
「まろやかでとても美味しい。グローバルレベルの完成度」
「アロマも楽しめるシンプルなウイスキー。ナッツの香りが残った」
「最初に口に含むとオイルっぽく、後味もスッキリ感じなかったが、栓を抜いた後はとても爽やかに飲めた」
「値段のわりには、芳醇な香りと味わい」
「輸入ウイスキーが安く買える日本で、同価格帯で買えるモルトウイスキーと比べるのは無意味。十分美味しいブレンデッド」
「スッと鼻に抜けてサッと消える、雑味がないところが好き。華やかでもくどくない」
「とても香りがよくて、上品にまとまっている」
マイナス評価ではアルコールの強さが気になるというのがありますが、ブレンデッドながら46度という高い度数も関係があるのかもしれませんね。
秩父蒸留所の特徴のひとつは樽の貯蔵庫
モルトウイスキーの熟成が行われる貯蔵方法では、ダンネージスタイル(またはダンネージ式)が伝統的と言われます。
ダンネージスタイルの熟成庫は天井が低く、樽は4段程度まで積み上げます。樽の大きさにもよりますが、それ以上積むと重量が下の樽にかかり過ぎてしまうんですね。
秩父蒸留所でもこの伝統的な方法で、樽を木のレールを使って積み重ねています。基本は3段で小樽だけ例外的に4段。
とはいえ、樽の移動を人間が行うために人手がかかってしまうのがたいへんなようです。
ちなみに、そのほかの方法として、1950から60年代に生まれたラックスタイル(またはラック式)があります。
スチールのレールを装備した高いラックに、8から12段ほどまで樽を積めるというもの。ラックスタイルは建設費が高くなるデメリットがある反面、スペースを効率的に使えます。
大きな貯蔵庫では地上から高くなるために、空気が樽の周りを循環して樽から多くの蒸発が起こりやすくなるんですね。
そこで、入れ替え作業などを行って樽の質の均一化をはかるわけです。
最近ではビームサントリーのバーボン「ベイカーズ7年」のように、高いところに置いたまま熟成させるプレミアムバーボンも出ています。
ベンチャーウイスキーの歴史
秩父蒸溜所社長の肥土伊知郎(あくといちろう)さんはウイスキーファンの多いアメリカで、「気鋭のジャパニーズウイスキーメーカー」として注目を集める日本人。
秩父蒸溜所は2008年に蒸溜を開始した個人経営の高級モルト専門蒸留所ですが、ルーツは造り酒屋(肥土社長の実家)の「東亜酒造」です。
東亜酒造「羽生蒸溜所」は埼玉県羽生市にあり、日本の地ウィスキーの先駆けとして「ゴールデンホース」というブランドを誕生させましたが、2000年に民事再生法の適用を受けました。
肥土社長は「羽生蒸溜所」のウイスキー原酒を引き取り、原酒を福島県の「笹の川酒造」で預かってもらい、2004年秩父市で株式会社ベンチャーウイスキーを設立します。
その後、「笹の川酒造」に通いながら、2005年に「笹の川酒造」にあるウイスキーを最初の「イチローズモルト」として発売します。
翌年の2006年にはこの羽生蒸留所のイチローズモルト「キングオブダイヤモンズ」が、イギリスの世界的な権威あるウイスキー専門誌「ウイスキーマガジン」でプレミアム・ジャパニーズウイスキー部門ゴールドメダル(最高得点)を受賞しました。
2007年からは5年連続で、「ワールドウイスキーアワード(WWA)」のジャパニーズ部門で世界最優秀賞を受賞。
品質の高さが注目され、世界にイチローズモルトの愛好家が増えました。
2008年に蒸溜を開始した秩父蒸溜所は現在でも4~5人ほどのスタッフで運営されています。
自然の状態にこだわるため、ノンチルフィルター(冷却濾過なし)、ノンカラー(無着色)の方針が貫かれている蒸留所です。