スペイサイド・インチガワー蒸留所の特徴
「インチガワー14年(Inchgower Aged 14 Years)UD花と動物」はスコットランドのスペイサイド地域にある、インチガワー蒸留所が造っているシングルモルトウイスキーです。
同蒸留所はマレイ湾の海岸から2キロメートルほど奥まった高台にあります。スペイサイドでもいちばん河口で海の影響を受けているため、アイラやアイランズほどの強烈さはないものの、スペイサイドモルトでは珍しい塩辛さが特徴の仕上がりとなっています。
所有しているのはディアジオ社で、同社のブレンデッドウイスキー「ベル」や「ジョニーウォーカー」の主要キーモルトとして使われているため、シングルモルトとしてボトリングされるのは生産量の1%程度と言われています。
インチガワー14年・UD社花と動物とはなにか
ブレンデッド用以外はほとんどが瓶詰業者(ボトラーズ)向けでしたが、1992年になって、蒸留所オーナーのUD社(ユナイテッド・ディスティラリーズ社)が傘下に収めた多くの蒸留所のシングルモルトウイスキーを「UD花と動物シリーズ」として発売します。
自社の蒸留所の樽からシングルモルトをリリースしているため、ボトラーズとは違ってオフィシャルボトル扱いなんですね。
このとき、インチガワー14年もシリーズのひとつとして販売されて、花と動物シリーズはその後、スタンダードとなったため、インチガワー14年はオフィシャルボトルとしてリリースが続いています。
現在、UD社はMHDモエヘネシー ディアジオ社となりました。花と動物シリーズは20~25程度の種類がありますが、原酒不足から現在入手できるのはその半分以下となってしまいました。
その意味ではインチガワー14年・UD社花と動物はレアなシングルモルトのひとつ。アルコール度数43度・700mlで、最安値(税込)は6,500円ほどと価格もそれなりですね。
風味の特徴は濃厚さと潮っぽさ
インチガワー蒸留所は1871年に創業しました。蒸留設備は8キロメートルほど東にあったトヒニール蒸留所のものが移設されています。
立地しているのはバッキーという土地で、この近辺は良質な水が豊富にあり、仕込み水にメンダフ丘の湧水が使える利点から選ばれたとか。
ポットスティルは1966年の拡張工事で増設されて現在は計4基。13棟もある巨大な貯蔵庫には6万樽が貯蔵できるため、近隣の蒸留所のウイスキーも保管されています。
こうして造られるインチガワー14年は、バタークッキーのような濃厚な風味と潮っぽさが溶け込んだ味わいを楽しめます。
インチガワーの種類
インチガワーの種類はシグナトリー社やブラックアダー社などのボトラー物ならいろいろあります。熟成物も3年、10年、12年、18年、20年、21年など豊富で、インチゴワという名前でも表記されます。
ちなみに、ラベルに描かれているのはハイランドでよく見かけられるミヤコドリ。
現地では「オイスター・キャッチャー」と呼ばれている水鳥で、その名の通り、干潮時などに地上に露出した牡蠣や甲殻類などを食べます。
日本には少ない鳥ですが、ヨーロッパやオーストラリアに多く生息しています。大きさはカモメくらいで目とくちばしが赤く、二枚貝の殻をこじあけるのが得意です。
最後にインチガワーの意味とは?インチはゲール語で「川のそばの草地」の意味で、ガワーは「ヤギ」。
インチガワーは「川のそばのヤギの放牧地」となります。キャラクターにミヤコドリもいいけれど、ヤギもよかったような気がしますね(笑)。