カバランディスティラリーセレクト 台湾の蒸留所が造る逸品クラシックとの違い
「カバランディスティラリーセレクト(Kavalan Distillery Select)」は台湾北東部の宜蘭(ぎらん)にあるカバラン蒸留所が造っているシングルモルトウイスキーです。
スタンダードの「カバランクラシック」がバーボン樽、シェリー樽、プレーンオーク樽などの熟成原酒をヴァッティングしているのにたいして、ディスティラリーセレクトもいくつかの樽の原酒がヴァッティングされていますが、具体的に樽の種類までは公開されていないようです。
特徴はクラシックの半値ほどの価格ながら、アルコールの刺激も少なくまろやかで、風味の点で大きな開きがないと評価されていることです。
ウイスキーの価格とレビューの評価は
カバラン |
通販販売店の最安値価格(税込) |
ディスティラリーセレクト (40度・700ml) |
4,100円ほど |
クラシック (40度・700ml) |
8,000円ほど |
クラシック (40度・50ml) |
1,300円ほど |
カバランディスティラリーセレクトはクラシックと同じアルコール度数40度・700mlで、最安値(税込)は4,100円ほど。クラシックはほぼ倍の8,000円ほど。
クラシックは50mlのミニボトルも出ているので、ちょっとだけお試ししたい方にはおすすめです。
一般的な評価で気になるのは、樽の風味が強めという個性から好みが分かれる傾向があること。「強めの樽感が私には合わない」「樽の渋みがかなり強い」という感想を持つ方もいます。「コクが弱い」「香りが弱い」と感じる方のレビューもあります。
とはいえ、好きな方にとっては「飲みやすい。瓶の形も気に入っている」「コクのある美味しいウイスキー」「香り、味、ともに山崎に近い。山崎12年には少し及ばないものの、ノンエイジよりは上」という評価が見られます。
メーカーによると、「高い品質によりハイボールなどでカジュアルに楽しめる価格を実現した」とのこと。
価格的にはハイボールで飲んでしまうにはちょっともったいないですね(笑)。比較してみたい方は、クラシックなら50mlのミニボトルセットが出ていますのでお試しください。
亜熱帯気候の台湾台北でウイスキーの製造や熟成に挑戦
カバランの特徴は亜熱帯性気候の利点を生かして、通常の倍近い速度で熟成させていること。亜熱帯気候でウイスキーの製造や熟成というのは珍しいケースですね。
日本でも温かい地域では本坊酒造鹿児島工場(信州にも蒸留所あり)で造られるマルスウイスキー、沖縄名護市のヘリオス酒造などがありますが、台湾はさらに南。
スコットランドは厳しい冬で知られていますし、日本では夏でも涼しい土地に蒸留所が置かれていることが多いですよね。
ご存知の方も多いと思いますが、バーボンの熟成が早く進むと言われるのは以下のような理由からです。
1.内側を焦がした新樽を使うため、樽のエキスが出やすい
2.年間を通しての気温差がとても大きい地域
亜熱帯性気候では年間の気温差も小さく、温度調整がたいへんではないかと感じます。
カバラン蒸留所も当初は「台湾で美味しいウイスキーなどできるはずがない」と言われたそうですが、大方の予想に反して、完成したウイスキーは常識をくつがえす評価を受ける結果に。
2010年にウイスキーの本場スコットランドで行われたバーンズ・ナイト主催のテイスティング大会で「カバランクラシック」が優勝。
世界で最も権威あるウイスキー賞といわれるWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)で「カバランソリスト・バーボン樽シングルカスク・ストレングス」が「ベスト・レスト・オブ・ザ・ワールド・シングルモルト・ウイスキー」を受賞しています。
カバランの製造工程
カバラン蒸留所の親会社は1979年に設立された「金車グループ(King Car Group)」。台湾屈指のドリンクメーカーで、台湾五大山脈のひとつである雪山山脈に湧くおいしい水で淹れたコーヒー「MR.BROWN COFFEE(伯朗珈琲)」などを販売しています。
この水はウイスキー造りにも使われています。大麦はイギリスより輸入、さらに樽もすべて世界中から調達しているので、水以外はスコッチ系の伝統にならっているんですね。
イギリスから輸入したランタン型のポットスチルで、年間で300万本分の製造体制があり、樽には樽詰めした日が記載されます。「リフィル樽」はR、「シェリー樽」はS、「バーボン樽」はBという頭文字がつけられて貯蔵されます。
最近では台湾も地震が多いため、貯蔵する樽は寝かすのではなく縦に(上の写真では横置きですが)保管されています。
カバランの意味
「カバラン(Kavalan)」の意味は「平原の人」。この地方に古くから住む台湾原住民、クヴァラン族が由来です。17世紀にスペインが台湾北部を占領した時代には土地の名前にもなっています。
2006年に北宜高速道路の雪山トンネルが開通、台北市内からは30分と身近になりました。見学もできる美しい蒸留所です。