クーリー蒸留所(ビームサントリー)が復活させた蒸留所
「キルベガン(Kilbeggan)」はビームサントリー社の所有する、カネマラで知られるクーリー蒸留所産のモルト原酒とグレーン原酒をブレンドしたアイリッシュブレンデッドウイスキーです。
風味の特徴はフレッシュな柑橘系の味わいとわずかなハチミツの甘味、モルトの芳ばしさがライトにおだやかに楽しめること。
同じアイリッシュということでジェムソンと比べる人もいますが、こちらかジェムソンかで意見は分かれますね。
サラサラ飲めてしまってクセがないとも言われますが、クセやスモーキーさが苦手なウイスキー初心者の方にとっても飲みやすい銘柄だと思います。
キルベガンの価格とレビューの評価
キルベガンはアルコール度数40度・700mlで、販売店での価格は記事アップ日(2022年3月7日)の価格で税込1,700円ほど。
初めてこのブログで紹介した2018年10月の価格と変わっていないようなので、安定している銘柄ですね。
旧ボトルのキルベガンもまだ若干あり、税込2,000円台で購入できるものもあるようです。
一般的な評価からまずはマイナス評価を指摘する感想をあげてみます。
「半額でいい。風味は良いが味わいが持続しない(英国)」
「典型的なアイリッシュウイスキーではない(英国)」
「アイルランド最古の蒸留所といわれるブルスナ蒸溜所の代表銘柄と聞き、期待値は高かったが主張に欠ける感がある(日本)」
支持するレビューは以下の通りです。
「香りが良いので、ストレートでチビリチビリと飲んでます(日本)」
「ジェムソンやブッシュミルズより軽く、ウィスキー初心者でも飲みやすい(日本)」
「安価で日常飲みにはいい(ドイツ)」
「叔母とアイルランド人の叔父からこれを試すことを勧められた。たしかに非常に滑らかな味わい(英国)」
「このウイスキーの味を本当に広げるには、水滴かアイスキューブを2、3滴加えること。滑らかで絹のようでとても風味がある。価格だけでも素晴らしいウイスキー(英国)」
最古のアイリッシュウイスキー、キルベガンの再稼働
キルベガンはクーリー蒸留所で造られていると先に述べましたが、キルベガン蒸溜所も存在していて、いずれはキルベガン蒸溜所で造られることを予定しているようです。
キルベガン蒸溜所というのは一時閉鎖されていて、レビューにもあるようにかつてはブルスナ蒸溜所と呼ばれていたんですね。
アイルランドのウェストミーズ州キルベガンにあり、1757年に創業しているアイルランドでも最古の蒸留所です。
ブルスナ川沿いにあったためにその名で呼ばれていましたが、のちに所有者が変わってロックス蒸溜所(冒頭の写真投稿者の方はその名前で投稿しています)、さらに現在はビームサントリーが所有していて、地名のキルベガン蒸溜所に変わったわけです。
ちなみに、キルベガンとはゲール語で「小さな教会」の意味があります。
6世紀にアイルランド12聖人の一人、聖ベガンがこの村に修道院を建てたことに由来します。
最古の蒸留所といえばオールドブッシュミルズ蒸溜所の1608年が話題になりますね。
でも、実際には町ぐるみの蒸溜酒づくりが始まった年を意味しているそうなので、正確には最古はブルスナ蒸溜所となるのでしょう。
ブルスナ蒸溜所からロックス蒸溜所、キルベガン蒸溜所へ
1757年に蒸留ライセンスを取得してウィスキーの蒸留をはじめたロックス蒸溜所時代には最盛期を迎え、19世紀後半には年間90万リットル近いウィスキーを生産していました。
しかし、アメリカの禁酒法に始まる「アイリッシュウイスキー苦難の歴史」とともに衰退、1957年には蒸留所が閉鎖されることに。
その後、放置されていた蒸留所に手が入ったのは1980年代前半。
地域の町興しとして蒸留所をビジターアトラクション(博物館)として残すように改修しています。
1987年になると北アイルランド国境に近いダンダルクに設立された、「カネマラ(Connemara)」で知られるクーリー蒸留所が所有権を得て、2007年になって250年ぶりにウイスキーの生産を復活させました。
昔ながらの小規模な生産風景が見学できる蒸留所
施設の規模が小さいので麦汁の発酵や1回目の蒸留まではクーリー蒸留所で行い、そこで得られた初溜液をキルベガン蒸留所に運び、2回目の蒸留のみを行うという体制が取られているそうです。
また、クーリー蒸留所で蒸溜した一部の原酒をキルベガンの貯蔵庫で熟成させたりもしていますが、いずれは初溜から造る計画があるようです。
2012年になるとクーリー蒸留所、キルベガン蒸留所ともにジム・ビームのビーム社に買収され、ビーム社は2014年にサントリーに買収されたため、いまは2つの蒸留所ともにビームサントリー社の傘下となっています。
キルベガン蒸留所は動力である水車の歯車が音を立てて動き、小規模ながらも伝統の古い蒸留設備が現役でウィスキーを造っています。
見学者がそれを見て回れるのが、ほかの蒸留所では体験できない大きな特徴なんですね。
ウィスキー評論家である故ジム・マレー氏をして「キルベガンを見ずしてウィスキーを語るなかれ」と言わしめた、長い歴史の重みが体験できる蒸留所です。