ラフロイグ10年の特徴・正露丸臭い?力強いアイラモルト
「ラフロイグ10年(Laphroaig 10Years Old)」の特徴や記事アップ日における最安値価格、定価、テイスティングによるアードベッグやボウモアとの比較、正規品と並行輸入品の違いなどについて解説します。
ラフロイグ10年はスコットランド西海岸沖のアイラ島にあるラフロイグ蒸留所が造っているシングルモルトウイスキーです。蒸留所は現在、ビームサントリーの保有となっています。
「ラフロイグ10年」の特徴は正露丸のようなヨードの香り、オイリーで濃厚味わい、やや塩っぽくてドライな後味。「アイラの王様」と呼ばれて高い支持を受けるスコッチです。
ラフロイグ10年をテイスティング・アードベッグとの比較
初心者の方にもわかりやすい、あくまでも私なりのラフロイグ10年(並行輸入品700ml)のテイスティングノートを紹介します。
開栓してみると、アードベッグと似たヨード臭がします。アイラモルト好きの方はこれだけで期待が高まりますね。
ストレートでは甘味よりも辛味の主張が強く、甘味はすぐに消えていく感じです。
ピートに覆われた風味の中に、バーボン樽特有のガツンとした男性的な強さがあります。同じ傾向のタリスカーよりも味わいの複雑さはないように感じます。
ラフロイグは樽のほとんどにバーボン樽のファーストフィルが使われています。ホワイトオーク材で最初のバーボン熟成樽なので、樽の強く影響を受けているのでしょう。
12年熟成ではなく10年というのは、落ち着いた味になる前のこのパンチ力を強く主張したいためでしょうか。
ハイボールにしてみると、飲んだ後、舌の上や口の中にちょっと炭のクセが残ります。独特の接着剤のような、ゴムっぽい風味の炭といった感じ。
これが古典的なフロアモルティング(後述)で培われる風味?樽の影響?旧ボトルをよく知る方からはこのゴムっぽさは近年の傾向との指摘もあります。
このクセが気になる人はいると思います。アードベッグで味わえる甘さやとろみはないので、アードベッグよりも辛いと感じるかもしれません。
とはいえ、好きな人にとってはすべて含めて、ラフロイグ10年の個性なのでしょう。
比較すると、個人的にはアードベッグのほうが好みに近いかなと思いますが、十分に美味しいお酒です。
くわしい比較はこちらでもやっているので確認してみてください。
ラフロイグとボウモアの飲み比べは?
ラフロイグとボウモアも飲み比べてみましたが、わかっていたとはいえ、ラフロイグを飲んだ後のボウモアはずいぶんおとなしく感じます。
ボウモアも強めの辛味はありますが、ピート香、果実の甘味とともにバランス良く、マイルドになっているので飲みやすいお酒です。
私もそうですが、アイラモルトのクセ強めが好きな人はボウモアよりもアードベック、ラフロイグ10年、アイランズのタリスカーあたりが好みですよね。
でも、ラフロイグの風味が男性的すぎる印象があれば、繊細なバランスのあるボウモアはおすすめです。
いずれにしても、アイラモルトが初めてなら、ラフロイグよりも最初はボウモアから入ったほうが無難ではありますね。
飲み続けるうちに、ボウモアでは物足りなくなってエスカレートしていくパターンもあります(笑)。
ラフロイグ10年の正規品と並行輸入品の違いとは?
ラフロイグ10年は正規品と並行輸入品で大きな違いがあります。それは度数・容量・味ともにまったく違うことです。
正規品750mlはアルコール度数が43度ですが、並行輸入品700ml、1000mlは40度。
通常、ウイスキーで正規品と並行輸入品では違いがない場合が多いのですが、正規代理店のサントリーが販売しているラフロイグ10年は日本のニーズに合わせた口当たりのやわらかい味になっていて、本場とは別物です。
私もそうですが、どうせ飲むなら本場の味というファンも多く、以下で紹介する一般的な風味評価も並行輸入品のほうを参考としています。
とはいえ、日本のニーズに合わせた正規品のある方はぜひお試しくださいね。
ラフロイグ10年の定価と700ml・750ml、1000mlの価格
ラフロイグ10年は正規品750ml、並行輸入品で700ml、1000mlがあります。
日本での正規代理店、サントリーの販売ページで定価の目安となる希望小売価格を調べてみると、正規品750mlで税込5,600円となっていました。
記事アップ日(2021年7月3日)の時点での通販価格は、700mlが税込4,000円ほど、750mlで税込5,000円ほど、1000mlが税込5,700円ほど。
高級品とはいえ、定価よりはまだ安く買える銘柄ではあります。
ラフロイグ10年 |
価格 |
700ml・40度 |
税込4,000円ほど |
正規品750ml・43度の定価 |
税込5,600円(希望小売価格) |
正規品750ml・43度 |
税込5,000円ほど |
1000ml・40度 |
税込5,700円ほど |
ラフロイグ蒸留所の特徴・フロアモルティング
ラフロイグ蒸留所では現在でも自社で昔ながらの製麦「フロアモルティング」を行っています。
大麦を麦芽(モルト)にするために、モルティング」と呼ばれます。原料となる大麦を浸麦(しんばく)→発芽→乾燥という順に製造していきます。
現在では同蒸留所を含めて数箇所しか自社でやっていないとか。とても手間がかかる部分を、機械化された最新鋭の製麦工場に委託するわけですね。
製麦は最初に大麦をタンクの中で水に浸漬して水分を吸わせます。
これは麦の表面に付着した埃や汚れを落とす、苦味の元になる成分を水中に出す、発芽を促進するという目的があります。
いったん水を抜いて酸素を吸わせたら、もう一度水を吸わせて水を抜き、さらにもう一度水を吸わせてまた水を抜くという作業を、外気温や水温に合わせて調節しながら行います。
最後に規定の水分量になったところで大麦をコンクリートの床に広げると、発芽が始まり、根と芽が成長します。このとき、4時間毎に撹拌して麦の発芽によって発生する熱を均等にします。
使用する道具が重く、熟練が要求される上、24時間体制で麦芽の状態を見なければならないのでかなりの重労働が必要とされます。
美味い正露丸・フェノール値(ピートレベル)は?
大麦が十分に発芽したら、熱を加えて乾燥させて発芽のプロセスを止めます。キルン(かまど)の金網のフロアに広げて、ピート(泥炭)を炊き込んだ熱で乾燥させます。
スモーキーな香りの強さはこのときに焚くピートの量によって変わります。ラフロイグはスコッチのなかでもとくにフェノール値(ピートレベル)が50~60ppmと高いほうです。
Amazonなどのレビューには「美味い正露丸」とたとえている人も多いですが、この臭いだけでもう飲めないと感じてしまう人も少なくありません。
ちなみに、同じスコットランドのピートでも、アイラ島やスカイ島のピートはある程度塊になっていますが、オークニー諸島メインランド島にあるハイランドパークのピートは小さな石炭や粉状が多いようです。
スコットランド最北端のハイランドパークでは寒すぎて木が育たないため、ヘザーなどの植物が堆積してできたものなのであまり固まらないそうです。
ひと口にスモーキー、フェノール値と言っても、ピートが採取される場所、使う水源のちがいで風味の特徴が違ってくるんですね。
また、ピートを焚いた大麦を全部使うのか、一部だけ使ってピート臭を調整するのかによってもまったく違ってきます。
チャールズ皇太子愛飲のラフロイグ
ラフロイグは英国王室チャールズ皇太子愛飲のモルトとしても有名で、1994年にはモルト蒸溜所としては初めて、チャールズ皇太子より王室御用達の認定を受けました。
強烈な個性ゆえに「惚れ込むか、大嫌いになるかのどちらか」と評価されてきた「ラフロイグ10年(Laphroaig 10Years Old)」。
好きな人からすれば「臭いをちょっとガマンして、チビチビ一本だけ飲んでみて」とアドバイスしたくなるわけですね。
でも、アイラモルトに染まる人は染まってしまいます。ダメなようなら一度保管しておいて、急がば回れでボウモアから再スタートでもいいと思いますよ。