モートラック12年・ジョニーウォーカーの隠し味を造るダフタウンの蒸留所
「モートラック12年(Mortlach 12Years Old)」はスコットランド・スペイサイドの中心地、ダフタウン最古のモートラック蒸留所が造っているシングルモルトウイスキーです。
モートラックといえば「ダフタウンの野獣」と言われるほどの力強さ、深い香りと重厚な味わいが特徴です。
その味わいはブレンディッドの隠し味としての価値が高く、同蒸留所を所有するMHDモエヘネシーディアジオではほとんどの原酒を、ジョニーウォーカーなどのスコッチに使ってきました。
希少なオフィシャルのシングルモルトウイスキー・16年や20年も
オフィシャルとしてのシングルモルトの流通量はごく少なく、限られた愛好家からは高い評価を得ながらも、一般的な知名度は低いままでした。
流れが変わってきたのは、MHD社から2015年に発売された「ウルトラプレミアムシングルモルト」シリーズ。希少なモルトが「モートラックレアオールド」「18年」「25年」の3アイテムで発売されました。
このシリーズはすでに終売となりましたが、時を経て2019年3月からは今回紹介する「12年」「16年」「20年」の3アイテムが発売されています。
2.81回蒸留のスコッチが生まれた歴史とその仕組み
モートラックの風味はほかに類を見ない複雑な工程により、生み出されるものです。これには同蒸留所独特の技術革新の歴史が関係しています。
1923年、ダフタウンで最初に認可された蒸留所として設立されたのち、30年後、ジョージ・コーウィー氏がオーナーとなります。
彼は産業革命期にスコットランドの鉄道開発に尽力した実業家で、エンジニアでもありました。そして、親子二代にわたって究極の味わいを科学的に追求していきます。
息子さんはDr.アレクサンダー・コーウィー氏。ドクターとつくのは彼が医学の道からウイスキー造りの世界に転身したからなんですね。
彼は科学的な見識を活かして、6基の大きさが異なる蒸留器ともつれるように入り組んだラインアームによる複雑な蒸留工程を発明します。
それが現代でも「2.81回蒸留」と表現される蒸留法。くわしい工程は省きますが、簡単に書けば、蒸留過程で3種類のタイプの違う原酒を造り出し、最後に合わせることで新しい原酒(ニューポット)を造るという方法です。
価格とファンが寄せるレビューの評価
モートラック12年はアルコール度数43.4度・700mlで、最安値(税込)は6,000円ほど。一般的な評価はモートラックのコアなファンの方の感想のみなので、否定的な評価はありません。
いろんな評価をまとめてみると、「独特の力強さを感じたい場合はストレートがおすすめ」「タバコを感じさせるような風味」「ミーティーさ(肉のような旨み)のある味わい」という表現が目につきます。
度数も43.4度と高めで、力強さ=アルコールの辛さという印象なのでアルコールの辛さが苦手な方にはストレートではきつそうです。また、一般的なスモーキーさとはちょっと違うクセもあります。
ただし、スペイサイドらしいフルーティーさもしっかりあるので、加水すると力強さがやわらいで果実感が強調されてくるので、飲みにくければ加水がおすすめです。
モートラックはボトラーズ物も多く販売されていて、そちらも人気です。飲み比べて独特の風味の違いを味わうのも贅沢な楽しみ方ですね。