プリマスジンの特徴・200年の歴史が香る上品な風味
プリマスジンとはどういうのか、ギムレットやマティーニなどのカクテルに合う理由や特徴、評価・おいしい飲み方、さらにラベルに描かれたメイフラワー号に関連した歴史について解説します。
「プリマスジン(Plymouth Gin)」はイングランド南西部のデヴォン州にある港湾都市、プリマスのバービカン地区にある「ザ・プリマスジン蒸留所(The Plymouth Gin Distillery)」が造っています。
1793年の創業以来、200年以上の歴史があり、現在イングランドで稼動している中では最も古い蒸留所なんですね。
プリマスジンは創業から伝わるレシピそのままに、ボタニカルで使っているのは伝統的なジンの王道といえる7種類。
ジュニパーベリー、レモンとオレンジの果皮、アンジェリカやオリス(におい菖蒲)の根、カルダモン、コリアンダーです。
ジュニパーベリーの存在感がやや強めで、ハーブ類は主張しすぎず、柑橘類と調和して上品な酸味と爽快感を感じさせてくれます。
こだわりの41.2度、57度のファンも多い銘柄
一般的なジンのアルコール度数は40度が多いですが、プリマスジンは41.2度。
この微妙な差が「芳香を引き出す最適な度数として調整された結果」なのだとか。
秘伝の蒸留法や度数の違いから、ボンベイサファイア・ビーフィーター・タンカレー・ゴードンと風味の違いでよく比較されます。
ただし、印象は個人差が大きく、まったく反対の感想を持つ人もいるので、自分で確認する必要がありますね。
ちなみに、プリマスジンには度数57度・700mlの「プリマスジン・ネイヴィーストレングス」もあります。
ビクトリア時代の海軍将校に愛飲されていた100プルーフ(57度)を再現したもので、以前は正規輸入されていて今もファンも多いのですが、なかなか通販でも見当たらないので残念ですね。
カクテルはギムレットなどオールドスタイルの飲み方で満喫
プリマスジンはジンベースのカクテルとして、世界中のバーテンダーから高い支持を得ている銘柄のひとつです。
1896年のドライ・マティーニの最初のレシピには、ベースとなるジンにはプリマスジンが指定されていたと言われます。
また、英国海軍御用達だったプリマスジンは「ギムレット」の始まりにも関係していたとか。
インドをはじめとした、当時の属国へ赴任する兵士たちのために配給されたわけですが、海軍の軍医、ギムレット卿が「健康のためにジンをライムジュースで薄めて飲むこと」を推奨しました。
これがギムレットの始まりとなったわけですから、プリマスジンで作るギムレットはオールドスタイルのギムレットの味と言えるわけですね。
手軽な価格で入手できてカクテルも作れるので、ジンが好きな人ならプリマスジンは一度は通っておきたいところです。
ギムレットはライムジュースコーディアルか、ライムジュースにシュガーシロップをちょっと加えたもので、プリマスジンと3:1くらいでシェークします。
強い個性が邪魔しないので、ジントニックなどクラシックなカクテルにも万能です。
プリマスジンの度数・価格・レビューの評価
プリマスジンはアルコール度数41.2度・700mlで、あくまでも記事アップ日の最安値価格ですが、1,300円前後。
一般的な評価からまずはマイナスを指摘する感想が以下となります。
「ドライすぎて華やかさがない」
「フタの閉まりが甘い」
「保管する際は横にすると漏れてくるので気を付けて」
たしかに、最近のクラフトジンのひとつの潮流ともなっている「華やかさ」には欠けますが、もともとそこを狙うつもりがないという男性的なスタイル(笑)。
フタの閉まりが甘い、中身が少しこぼれるという口コミを書く人は多いですが、そのいっぽうで「トラブルはなく正常に機能している」という人もいます。
プリマスジンを注文する愛飲家のなかには、液垂れも「覚悟」したうえでネット注文している人もたしかにいます(笑)。
支持するレビューは以下の通りです。
「スッキリしていて、非常に飲みやすい」
「3000円以下でいちばんウマイと思う」
「ボトルのデザインに惹かれて購入しましたが正解でした」
「ギムレットに最適。甘みがありキリッとしすぎず、まろやかなのでライムと合わせた時にちょうど良い」
「コスパが良いオーソドックスなジン」
「初心者ですがおいしいです」というレビューも多く、ジンの愛飲家から初心者の方まで守備範囲も広くアピールしているお酒です。
プリマスジンとは?メイフラワー号に始まる歴史
プリマスジンはイギリスのジンの中で唯一、EUの規定で地理的表示が認められています。
プリマスの旧城壁に囲まれた地域の中で蒸溜されるものだけが、プリマスジンと呼んでいいことになっているんですね。
プリマスジンの現在のラベルは、1620年にプリマス港から出港したメイフラワー号。
その歴史は16世紀にエリザベス1世がイングランド国教会を確立したことがきっかけでした。
それから、17世紀にかけて国教会から分離を求めるグループは分離派と呼ばれ、弾圧を受けはじめます。
1620年になり、信仰の自由を求めたピルグリムファーザーズ(巡礼始祖)102人がこのプリマスの地からメイフラワー号に乗って北アメリカ大陸を目指します。
彼らがイギリス最後の夜を過ごしたというのが、プリマスジン蒸溜所の建物。
当時はブラックフライヤーズ蒸留所(Black Friar Distillery)と呼ばれていました。
ドミニコ会派修道院跡に作られた蒸留所で、ローマ・カトリックのドミニコ修道会の修道士(Friar)が黒のマントを羽織っていたことに由来しています。
現在も1431年にドミニコ会が建てた修道院の一部が残っているそうです。
1620年にピルグリムファーザーズが上陸したのは、アメリカの現在マサチューセッツ州プリマスにあるケープコッドの先端でした。
のちの1741年、エルダー・トマス・フォーンスという老人の証言によって、ピルグリムファーザーズが最初に踏みしめた岩が「プリマス・ロック」とされて、現在も残っているんですね。
彼らはその後、キリスト教徒にとって理想的な社会の建設をめざしました。
ところが、イギリスから持ってきた野菜や小麦は収穫にとぼしく、翌1621年の4月までに半数ほどが病死。
先住民族との対立や戦争など、理想とはほど遠い50年以上もの過酷な運命をたどり、アメリカ大陸に根を下ろしていくのでした。
プリマスジンのボトルの右下には杯を持った修道士の男性が見えます。
重い歴史を背負った船のラベルの下で、ご機嫌な表情がほっとさせてくれます。