「スチームパンクジン(Steam Punk Gin)」はイングランド北東部ゲーツヘッドのロー・フェル (Low Fell)にあるスチームパンク社で醸造されているクラフトジンです。
ゲーツヘッドという地名は、この地を流れるタイン川岸あたりにローマ時代に村落があったので「ローマ街道の果て」という意味があるとか、ここにヤギが群棲していたためなどの説があります。
また、ザ・セージ・ゲーツヘッド、エンジェル・オブ・ザ・ノース、バルチック現代美術センターなど、ユニークな建築が多いことで知られる土地でもあります。
ちなみに、社名やボトルのネーミングとなった「スチームパンク」とは、「スチーム(蒸気機関)」と「サイバーパンク」の造語。
サイバーパンクは従来のSFやスペースオペラ、サイエンスファンタジーなどに対するカウンター思想、運動でしたが、現在は人体改造や意識の大規模ネットワークに個人や集団が接続された世界観で描かれることが多いですね。
スチームパンクとサイバーパンクの違いは、スチームパンクでは蒸気機関が使われる設定であることです。
イギリスならヴィクトリア朝やエドワード朝、アメリカなら西部開拓時代、日本なら明治の文明開化や大正ロマンの世界観にSFが融合したイメージ。
この世界観がスチームパンクジンとどんな関連があるのか、調べてみましたがくわしくは出ていません。
個人的な感想ですが、「スチームパンク」社の由来は先ほど紹介したユニークな建築が多いゲーツヘッドの風土を愛するゆえのネーミングではないかと感じます。
とはいえ、決して無機質な風土ではなく、ウィンディ・ヌーク自然公園、サルトウェル・パーク(Saltwell Park)があり、美しい自然を楽しめる地域です。
「スチームパンクジン(Steam Punk Gin)」は1892年、ローリー・ホームズ・ダンストン卿が開発したジン・レシピがもとになっています。
ジュニパー、カルダモン、シトラスのほか、グレープフルーツの皮や甘草、さらには乾燥した果実がブレンドされています。
スムーズな口当たりとフレーバーの調和は当時のイギリス上流階級の間で大きな評判となりましたが、その後、レシピは失われてしまい、2013年になって古書のなかから発見されます。
それからスチームパンク社が2014年に再現に成功。当時の味を現代に甦らせると、「素晴らしくバランスがとれたロンドンドライジン」と評価を受けて、2016年にはロンドンのワールドジンマスターズのコンペでゴールドメダルを受賞しています。
伝統のロンドンジンをイメージさせる、平たい透明のガラスボトル。スチームパンクという名前と風変わりなラベルデザインには、伝統を守りながらも流されないというこだわりが透けて見えてくるようです。