タリスカー蒸留所が造るブラックペッパー風味モルトの特徴
ブラックペッパー風味と言われる「タリスカー10年(Talisker 10Years Old)シングルモルトウイスキー」の特徴やテイスティングの紹介をしてみます。
このほかに一般評価や定価、通販価格、黒胡椒ハイボールのおいしい飲み方などを解説します。
タリスカー10年はスコットランド・スカイ島で最も古いタリスカー蒸留所が造っているシングルモルトウイスキーで、アイランズモルトに分類されます。
広告では「口の中で爆発する」ともいわれる強いスパイシーな黒胡椒風味、海の潮気のあるパンチの効いた味わいが特徴というフレーズを見かけます。
一般評価でもスモーキー・潮気・磯臭さ・スパイシーといった感想が並んでいます。さて、実際にどうなのか、最近のボトルをテイスティングしてみました。
タリスカー10年をテイスティング
テイスティングではその人の嗜好が大きく左右しますね。私もスペイサイドモルトよりはアイラモルトやアイランズモルトが好きな方ですから、そちら寄りの評価になったようです。
飲んだ瞬間、キーモルトに使われている「ジョニーウォーカー」ブラックラベルを思い出しました。口当たりも似ていますね。
タリスカー10年はアルコール度数が45.8度と高めなので、口当たりはピリッときますが、安いウイスキーにありがちなトゲトゲしいアルコール刺激はなく、繊細に響いてきます。
塩辛いと表現される味も、あと味での塩辛さを少し感じる程度で気になりません。ただ、このあと味がしばらく口の中に残るのでうまいと思う人はいいのですが、きらいな人はこれが苦手に感じてしまうのかも。
繊細なピリピリとスモーキーな香りを称して「ブラックペッパー」という印象につながるのでしょう。
いずれにしても、男性的でガツンとくるウイスキーなので、スペイサイド系の繊細で複雑な果実風味とは別物ですね。
口当たりのまろやかなアードベックとは別物ですが、どちらもハイボールにしても負けないだけのしっかりした個性と飲みごたえがあるのはうれしいです。
飲みながらも、もう一本を購入しておけばよかったと思いました。
タリスカー10年の定価と通販価格
タリスカー10年はアルコール度数45.8度・700mlで、あくまでも記事アップ日(2021年4月5日)の価格ですが、通販販売店では税込3,400円ほど。
タリスカー10年の定価の目安となる希望小売価格はこちらも記事アップ日(2021年4月5日)の時点で税込5,500円となっていますから、定価よりも現時点ではかなり安く飲めるお買い得な銘柄といえます。
コスパの良さもあるのでしょう、2018年にHIDEOUTCLUB MAGAZINEで約300名のウイスキーに聞いたアンケート企画で、「家飲みウイスキー」の第1位にタリスカー10年が選ばれています。
タリスカー10年の一般的なレビュー評価
一般的な評価からまずはマイナス評価を指摘する感想をあげてみます。
「以前のタリスカーと比べて、パンチが弱くなった」
「ハイボールでは正露丸のような味。ロックでも癖がある。私の好みには合わない」
「ラフロイグをちょっと辛口にした感じで、味の複雑感がない。あと一味欲しい」
「ビートの香りが強烈。好みの分かれるお酒」
「私が住んでいる海辺の町や海藻、暑い日の匂いを思い出させる。他の人々は好きかもしれないが、思い出しすぎる(英国)」
支持するレビューは以下の通りです。
「スパイシー、甘さ、香りが良い。アイラモルトとは全く違うけれど、この個性も好き」
「詮を抜いたら漂うヨード、口に含めば幼い記憶の磯の探検が広がる」
「押し寄せる力強い潮、じわじわとしたアルコールのアタック感が晴れると、ふわりと一瞬の甘み」
「アイラ好きは勿論、ニッカの余市を好む人には間違いなく堪らないウイスキー」
「価格が上がり気味なウイスキーにおいて、安くてうまいタリスカー10年の存在はありがたい」
「ちょっと塩辛くてちょっと苦みがあって、口に含んでると甘みも出てくる複雑な味」
「ラガヴーリンと並んで最も有名なスモーキーウイスキーの1つであり、海塩のタッチで、とても素敵なセットを完成させている。燻香が苦手な方は逃げてください(スペイン)」
「この独創的なウイスキーは価格と中身のつり合いがとれている。スモーキーなので、ウイスキー経験が豊富な人に適している(ドイツ)」
「泥炭がちょうどいいバランス。ラフロイグほど後天的な味ではない(英国)」
タリスカー10年・ブラックペッパーハイボールのおいしい飲み方
「タリスカー10年」の愛飲家に愛されるちょっと変わった飲み方があります。それが強い黒胡椒の個性を活かした「スパイシーハイボール」。
スパイシーハイボールの作り方
1.冷やしたロンググラスに氷を入れる
2.タリスカー10年をダブルくらいの濃いめの量で注いでソーダで満たす
3.ブラック・ペッパーを氷に振りかけて完成
黒胡椒を振ったあと、風味が逃げないようにかき混ぜずに飲むのがおいしい飲み方と言われるので、ぜひ試してみてください。
タリスカーオリジナルペッパーミルとは
タリスカー10年ではキャンペーンがよく開催されます。2017年にはタリスカーを3本購入した人に片手で胡椒を挽ける「タリスカーオリジナルペッパーミル」と横浜燻製工房謹製「黒胡椒の燻製」をプレゼントというキャンペーンがありました。
このときの反響を受けて2018年には「第2弾」が再リリースされました。ペッパーミルはついていませんが、ボトルと「黒胡椒の燻製」のセットです。
インド産の黒胡椒にスコットランド産のピートを強烈に効かせて燻製したという、香り高い黒胡椒。
しかも、麦芽を乾燥させる時に使うピートを胡椒の燻製にも使うという手のこんだ製造法だったので人気となったんですね。
オリジナルペッパーミルはもう在庫がありませんが、片手で挽けるペッパーミルは税込1,000円ほどから通販で購入できるのでチェックしてみてくださいね。
タリスカー10年・フラスクパックや家飲みを豊かにするギフトセットとは
2020年にはタリスカー10年のフラスクパックが販売されましたが、ステンレス製フラスクボトルにタリスカーを注いで一定期間が経過すると変色が見られたとして、健康被害の報告はなかったものの、残念ながら自主回収となっています。
その後、「タリスカー10年家飲みを豊かにするギフトセット」という限定アイテムのギフトが販売されました。
ギフトセットはタリスカー10年1本と、トレイ、コースター、ココット(皿)、マドラーなど、取扱販売店が異なる限定アイテム1点がセットになっているというものでした。
2021年はどんなセットが登場するのか、楽しみですね。
荒々しさを造り出す蒸留所周辺の厳しい気候環境
『宝島』の著者であるロバート・ルイス・スチーブンソンが「King of Drinks(酒の王様)」と評して愛飲したことでも知られています。
タリスカー10年にはその男性的な風味に魅せられた多くの愛好家がいます。この風味を生み出しているのは蒸留所の環境と製造法にあります。
タリスカー蒸留所は1830年、ヒューとケネスのマカスキル兄弟によってスカイ島で設立されました。その後、オーナーの変遷を経ていますが、製造法は創業当時の伝統が守られています。
霧が多いことから「霧の島」とも呼ばれるスカイ島。夏でも気温が15℃ほどしか上がらず、晴れる日の少ない厳しい気候環境なんですね。
頻繁に雨が降っているため、岩石質の地層は雨水を絶え間なく海に向かって流し続けています。同蒸留所はスカイ島のロッホ ハーポートと呼ばれる入り江にあり、創業以来、この雨水から生まれる湧き水を仕込み水に使っています。
また、原料の大麦を乾燥させるのにピート(泥炭)が燃料に使われ、いぶした煙が大麦につくことによってスモーキーな香りが生まれます。
設備の独特な形状が生み出す風味
蒸溜釜の形、大きさ、高さ、蒸溜釜とコンデンサーをつなぐラインアームの角度などで原酒は多様な味わいに変化します。
タリスカー独特の強い黒胡椒風味は、同蒸留所が使っているポットスティルとコンデンサーをつなぐラインアームの独特なデザインに関連があると言われています。
ポットスティルから垂直に向かい、水平に伸びたのちにもう一度直角に下るU字型のねじれがあり、還流を促すためにくぼみの基部にピュリファイヤー(精溜器)が設置されています。
この仕組みこそが黒胡椒風味の秘密とか。料理ならスモークチーズ、燻製ベーコンやこってりした肉料理などがさっぱり飲めますね。チョコレートならビターがいいですね。
和食なら寿司にも合うという評判もあるので、試してみてくださいね。