タムデュー蒸留所・10年やバッチストレングスの個性とは
「タムデュー(Tamdhu)」はスペイサイドの中心部、スペイ川の北側に位置するタムデュー蒸溜所が造っているシングルモルトウイスキーです。
定番の10年をはじめとして、25年、28年、バッチストレングス、同ボトルのNo.002をはじめ、ボトラーにもいくつか種類があります。
とはいえ、ブレンデッドの「フェイマスグラウス」や「ダンヒル」のキーモルトとして多く使われてきたため、一般的な知名度は低めのようですね。
タムデューとはゲール語で「小高い黒い丘」を意味する地名。蒸留所の仕込み水はタムドゥー川の伏流水が泉となった湧水を使い、初留器3基、再留器3基のポットスチルで蒸留されます。
フェイマスグラウスの甘味とかすかなスモーキー感
タムデュー蒸留所の大きな特徴は、スペイサイドにあるウイスキー蒸留所のうち、唯一ここだけが麦芽を100%自給して、1951年から導入したサラディン方式(後述)のモルティングを行っていること。
定番10年の熟成にはファーストフィルのシェリー樽が主に使われていて、フルーティーな甘味とともにわずかに潜んだピートのスモーキー感を楽しめるお酒です。
タムデュー10年の特徴・価格・レビューの評価
蒸留所は近年、所有していたエドリントン・グループにより一時閉鎖されますが、2012年、イアン・マクロード社が買収。1897年の創業当時のフレーバーが再現されました。
タムデュー10年はアルコール度数40度(並行輸入品では43度もあり)・700mlで、あくまでも記事アップ日の最安値(税込)ですが、4,600円ほど。
価格がそれなりですが、40度・50mlのミニボトルが750円ほどで販売されているのでお試しにはいいかもしれません。
タムデュー |
通販販売店の最安値価格(税込) |
10年 (40度と43度・700ml) |
4,600円ほど |
10年 (40度・50ml) |
750円ほど |
バッチストレングス (58.5度・700ml) |
8,500円ほど |
一般的なレビューではマイナスを指摘する感想もなく、「スコッチの認識を完全にひっくり返されました。まろやかな中にしっかり強さもあり感動」「クセはないが、ストレートですごい甘さを感じる味のしっかりしたウイスキー」「東京のルパンというバーですすめられ、美味しくいただけたので、ボトルで購入」など、高い評価の感想が見られます。
私もルパンさんにお邪魔したことがあります。ギムレットを丁寧につくっていただいたことをよく覚えています。
バッチストレングスの特徴・価格・レビューの評価
タムデューバッチストレングス(TAMDHU Batch Strength)はアルコール度数58.5度・700mlで、記事アップ日時点の最安値(税込)は8,500円ほど。
シェリー樽原酒だけで熟成されたカスクストレングスのシングルモルトです。
こちらも支持するレビューのみ。「かなりのシェリー感。カスクなのにシェリーのえぐみも控えめで、バランスが良い印象。コスパが良いシェリー」「嫌味な部分があまりなく、綺麗な近年タイプのシェリー系ウイスキー」など、ベテランクラスの方が高い評価をしています。
ちなみに、バッチストレングスにはNo.002もありますが、通販を探したところ見つからないようなので、オークションで入手するしかなさそうですね。
サラディン方式のモルティングとは
タムデュー蒸留所のサラディン方式について解説します。モルティング(製麦)は大麦の内部に酵素を生成させるために発芽させ、途中で発芽を制御するプロセスです。
発芽のスピードを上げる段階では、大麦をひっくり返して空気に晒す必要があります。そこでモルトを均一に広げ、シャベルや原始的な機械でひっくり返す作業が伝統的な人力によるフロアモルティング。
現在は麦芽製造業者に委託する蒸留所がほとんどで、機械化されたサラディン方式、ドラム式モルティングで行われます。
サラディン方式とはサラディンボックスとも呼ばれるもので、19世紀後半にフランス人のサラディン氏によって考案されました。
大きな部屋の床を四角に区切り、大麦を入れて下から空気を送って攪拌するんですね。効率アップ、経済的というメリットから注目されましたが、その後、ドラム式モルティングが登場。
省スペースでモルトをひっくり返す作業も少なくなったため、サラディンボックスは姿を消します。
でも、タムデューでは貴重なサラディン方式の伝統でいまも製麦されています。
ちなみに、ドラム式モルティングの機械でさえ、歴史的価値のある設備としてスペイバーン蒸留所で保存されているほどです。
知れば知るほどウイスキーに愛着が湧いてきます。