ティーリングスモールバッチ ニカラグアのラムカスク熟成の味
「ティーリングスモールバッチ ラムカスク(Teeling Small Batch Rum Cask Finished)」はアイルランド・ダブリンのインディペンデントボトラー(独立瓶詰業者)であり、蒸留所も経営しているティーリングウイスキー社が造っているアイリッシュウイスキーです。
スモールバッチといえばスコッチではシングルモルトを想像しがちですが、こちらはブレンデッドウイスキー。
ティーリング蒸留所は2015年にオープンしているので、2018年の時点では同蒸留所の原酒ではなく、ほかの蒸留所から買い付けた原酒が使われていると思われます。
大きな特徴はモルトとグレーンをブレンドしたあとでニカラグアのラムカスク(銘柄はフロール・デ・カーニャ)で後熟を施し、スモールバッチ(少量生産)、冷却濾過を行わずに(ノンチルフィルター)瓶詰めしていることです。
後熟にラムカスクを使う熟成法は一般的にはあまり知られていませんが、実は多くのウイスキーメーカーで使われている方法です。
ラム酒とはどういう蒸留酒なのか、その製造法は
ラム(Rum)は西インド諸島が原産地と言われる、サトウキビの廃糖蜜や絞り汁を原料として作られる蒸留酒。
サトウキビに含まれるショ糖を酵母でアルコール発酵させてエタノールに変えた後、蒸留、熟成して作られるんですね。
ラムの種類は豊富で、色の濃度(ホワイト・ゴールド・ダーク)による分類、香りの強さ(連続式蒸留機か単式蒸留器か)による分類、原料別製法による分類があります。
原料別製法は2つ。ひとつは「インダストリアル製法」というもので、サトウキビから砂糖を精製分離した後の副産物であるモラセスを原料とする古典的製法。
モラセスは貯蔵できるため、サトウキビの収穫時期に関わらず、通年で製造が可能。全世界で生産されるラム酒の98%が、この製法で作られていると言われています。
もうひとつが「アグリコール製法」と呼ばれる、サトウキビの搾り汁を直接原料とする製法。
こちらはサトウキビの栽培地の近くでしか行えない製法で、サトウキビの収穫時期でなければ製造が行えないため、限られた場所だけで造られています。
高品質ブランドのラム酒樽を使ったアイリッシュウイスキー
「ティーリングスモールバッチ ラムカスク」に使われているラムカスクの銘柄「フロール・デ・カーニャ」は前者の「インダストリアル製法」で造られるラム酒。
現在、ニカラグアで唯一ラムを製造する1980年創業のフロール・デ・カーニャ蒸留所の高品質ブランド。
5年、12年、18年、25年などの熟成ボトルがあり、日本でもラム好きな人にはよく知られています。
同蒸留所のラムは11月の乾燥期に刈り取ったサトウキビのモラセスを原料に、ファイヴ・コラムスティルという連続式蒸留機で蒸留。
そのあと、180Lの小さなホワイト・オーク樽で熟成してつくられる、まろやかで深い甘味が特徴のラムです。
ちなみに、ティーリング社のようにラムカスクの銘柄まで公開しているところは少なく、ノンチルフィルターで自然なコクを残しているところも、樽への信頼を感じますね。
テイスティングレビューと価格、販売状況
「ティーリングスモールバッチ ラムカスク」はアルコール度数はちょっと高めの46度・700mlで、最安値価格(税込)は3,500円ほど。
アイリッシュらしいまろやかな喉越しがあり、ラムカスク由来の南国のバナナやマンゴーのような甘みを感じます。
アルコール度数が46度と高めなので飲みごたえもしっかりとあり、アイリッシュでありながら、上品なスペイサイド系のスコッチという印象も受けるウイスキーです。
まだ一般的なテイスティングレビューは出ていませんが、この価格でこの風味と度数なのでウイスキー通の方にも好評です。酒屋さんではなかなか売っていない銘柄なので、ネット通販での購入をおすすめします。