トマーティン12年シングルモルトウイスキー 蒸留所の歴史
「トマーティン12年(Tomatin Aged 12 Years)」はスコットランドのハイランド地方の主要都市インバネスから南に約25km下ったところにある、トマーティン蒸留所が造っているシングルモルトウイスキーです。
同蒸留所の正式な設立は1897年ですが、ウイスキーづくりの歴史は反革命勢力のジャコバイト軍と英国軍との間で行われたカロデンの戦い(1746年)の時代にまでさかのぼるとか。
標高315mに建てられた蒸溜所は、モナリアス山系の複雑な地質を経て村を流れる「オルタ・ナ・フリス(自由の小川)」の水を仕込み水に使っています。
宝酒造と国分といった日本企業との関わり
かつてはスコットランド最大のモルトウイスキー蒸溜所として、計23基のスチルで年間1250万リッターを超える生産量を誇りました。
これは現在のザ・グレンリベット、ザ・マッカラン、グレンフィディックに匹敵すると言われます。しかし、1980年代に不況により経営が悪化。
日本の宝酒造が買収、量より質に重点を置いた生産体制に方向転換して、日本にも輸出されるようになりました。
その後、宝酒造は撤退しますが、現在は老舗食品卸売業の国分グループが輸入販売しています。
トマーティン12年の風味の特徴1.ポットスチル
トマーティンの初溜釜と再溜釜はサイズも形状も同じバルジ型。初溜釜には窓がなく、内部の様子がわからないのである工夫がされています。
ちょっと見えにくいですが、冒頭に掲載した写真の真ん中、ポットスチルの脇に小さな青いボールがロープで垂らしてあるのが見えるでしょうか。
この木製ボールを初溜釜の脇に垂らしておきます。蒸留の途中ではロープを揺らしてスチルのヘッドにボールを打ち付け、その音を聞きます。
つまり、音を頼りにしながらスチル内部の状態を確認、必要なら熱を調整するという方法で管理しているんですね。
風味の特徴2.樽熟成に細かな工夫
熟成にもいくつかの工夫があります。まずはバーボン樽に貯蔵します。そのあと、リフィルのホグスヘッド熟成の原酒、シェリー樽熟成の原酒に分けてヴァッティング。
リフィルのホグスヘッドとは容量250リットルくらいの小さい樽で、何回かウイスキーの熟成に使用した樽を再使用するという意味です。
ヴァッティングのあとは約8か月間、シェリー樽で仕上げの熟成をします。その結果、シェリー樽由来の強めの甘い風味のあとからバーボン樽の焦がした樽感も楽しめる特徴となっています。
価格とレビューの評価、ウイスキーチョコもあり
トマーティン12年はアルコール度数43度・700mlで、記事アップ日の最安値(税込)は3,500円ほど。
40度と43度で700mlの旧ボトルもまだ在庫があり、3,500円ほどなので旧ボトルという選択もできますね。
また、トマーティン12年を使ったチョコ(ウイスキーボンボン)もあり、こちらもオシャレなプレゼントとして人気となっています。600円ほどとお手軽です。
一般的な評価からまずはマイナスポイント。「高くもなく値段相応で普通」という感想がありますが、飲み慣れている方でスペイサイドやハイランド系の銘酒と比較してのレビューでしょうか。
評価するレビューには「軽いピート香のウィスキーですが、スコッチの中ではかなり甘口、素朴な風味」「何とも言えない複雑な味わい」「華やかなアロマにしっかりとしたボディー。隠れた逸品」などのレビューが見られます。
「BIG T」「エンシャントクラン」のキーモルト
トマーティンがキーモルトとして使われているブレンデットウイスキーは「BIG T」「エンシャントクラン」。
「エンシャントクラン」は最近、イオンで見かけたので私も飲んでみました。やや甘みがあったものの、飲みやすいかは疑問。ほぼハイボールで飲みました。あくまでもブレンデットとしての話です。
ちなみに、トマーティン蒸留所で使わなくなった昔の設備はビジターセンターに保存されていて、ウイスキーづくりの工程を見学できるように展示されています。
実際にマッシュタン(糖化作業を行う仕込槽)の中に入れるという、貴重な体験もできとか。入ってみたい方は多いはずです(笑)。