「VL92ジン(VL92GIN)」はオランダ南西部のフラールディングにあるファントゥール蒸留所が造っているクラフトジンです。
フラールディングは南ホラント州にあり、18世紀にオランダジン「ジュネバ」の酒造で繁栄した歴史と伝統のあるスキーダム(スヒーダム)のとなりに位置しています。
「VL92ジン」の大きな特徴はオランダ人の工業デザイナーがプロデュースしている、オリジナルレシピによるオランダジンであることです。
シエッチェ・カークウジィック氏がその人。彼がキルギス共和国の輸出振興の一環としてオランダ産のウオッカに関わったことがきっかけでした。
ウオッカのみならず数多くのジンを試飲するうちに魅力に取りつかれると、2010年に旧知のファントゥール蒸留所へ企画を持ち込んで120本ものジンを試作。
歴史ある蒸留所の助言を得ながら研究を重ね、2012年に発売されています。「VL92」という商品名は100年以上前にオランダからイギリスへの貿易に使用されていた船の名にちなんでいるとか。
100年以上前といえば、1914年から1918年にかけて第一次世界大戦が起きていますから、その時期か、少し前ということになるでしょうか。
ジンを載せてオランダからイギリスへ向かう船のイメージかもしれませんね。
「VL92ジン」の特徴は細かなこだわりにも表れています。ベーススピリッツにこだわるクラフトジンは多いですが、こちらはモルト、ライ麦とコーンが原料に使われ、3種がミックスされています。
このタイプのベーススピリッツはジンに柔らかさを与えて、カクテルに使用したときのボディ感(コクの重み)やフィニッシュの長さが出ると言われます。
さらに、ボタニカルにはジュニパーベリー、アンジェリカ、アプリコットの種子、ビターオレンジのピール、コリアンダーの種子と葉など、計14種類が使われています。
コリアンダーはパクチーやシャンツァイ(香菜)の名でお馴染みですね。種子を使うのは伝統的ですが、葉を使うのは珍しく、それだけパクチーの香りが強調されています。
パクチーが好きな方はぜひ試してみてください。「VL92ジン」ベースのジントニックにパクチーの花などをあしらえてみるのもオシャレですね。
それにしても、ボトルデザインが病院の点滴のように見えてしまうのは私だけでしょうか(笑)。現地のデザイン関係の著名な賞も受賞しているそうですから、斬新と評価すべきかも。