ウイスキーNV(ノンビンテージ)・ノンエイジとは?
ウイスキーNV(ノンビンテージ)は樽を貯蔵した年数、つまり熟成表記のないウイスキーをさします。ノンエイジとは同じ意味です。
ウイスキーには表示してある年数より若い原酒を混ぜてはいけないというルールがあります。
ノンエイジは瓶詰めの工程で熟成年数の異なる原酒をブレンドしているため、年数の記載がないわけですね。
原酒不足で登場した熟成表記のないお酒
近年、スコッチでもジャパニーズウイスキーでもノンエイジが増えていますが、これには理由があります。
1980年から1990年代にはウイスキー不況の時代がありました。
この時期に仕込んでいた原酒が近年のウイスキーブームを予測できなかったこともあり、在庫が少なかったんですね。
その結果、世界的な原酒不足となり、熟成年数の長い原酒と若い原酒を混ぜるノンエイジが登場しました。
ウイスキーの最低熟成年数とは
ウイスキーのシングルモルトは、ひとつの蒸留所でつくった原酒だけを使ったウイスキーです。
たとえば、サントリー山崎12年を例にとると、山崎蒸留所の原酒だけを使っていますが、12年物の樽に入った原酒だけを使っているわけではありません。
いろんな年代の原酒をまぜて仕上げているのですが、まぜた中の一番若い原酒の熟成年数を表示しなければいけないので、最低熟成年数にあたる「12年」が表記されているんですね。
実際には12年以上熟成している原酒も使われていて、スコッチなどの銘柄によっては20年というような長期熟成の原酒が使われている場合もあります。
長期熟成の愛飲家とノンビンテージ
年代物のウイスキーや熟成10年、12年以上の長期熟成ボトルの愛飲家がこのノンビンテージをテイスティングした口コミ評価を見ると、高い評価をしないことが多いですね。
「若い原酒のトゲトゲしさがある」「辛い」「深みがない」「複雑さに欠ける」というような感想ですね。
長期熟成ボトルの風味と比較してしまうと、無理もないところです。
むしろ、ノンビンテージは別物として、その個性を受け入れられるかどうかですね。
蒸留所(メーカー)の主張は?
スコッチやジャパニーズウイスキーの大きな蒸溜所では、蒸溜工程で大きさや形の異なる蒸溜釜を使い分けることで多彩な原酒のつくり分けをします。
さらに、貯蔵工程ではさまざまな樽の種類を使い分け、貯蔵場所の気温、湿度によっても違う風味が生まれます。
また、同じ種類の樽に保存しても、樽ひとつひとつの個性から味は変わります。
蒸留所(メーカー)としては、「熟成年数だけのウイスキーは蒸留所が生み出す個性が完全に表現しづらく、年数表示をなくすことで若い原酒も使えて個性が表現できる」という目的もあるとか。
うがった見方をすれば「それは若い原酒も使うしかない言い訳なんじゃないの?」となるかもしれませんが、ノンビンテージでも人気のある銘柄はたしかにありますね。
ウイスキーは人の意見に左右されず、「自分がおいしいと思ったウイスキーが一番」です(笑)。
ちなみに、ノンビンテージは蒸留所の複数の原酒から自由に選び、ブレンドするわけですから、ブレンダーのこだわりや個性がはっきり表現されるというのが興味深い点です。
ノンビンテージのなかには「ピート香」や「スモーキー」という個性を強めに出して、ウリにしている銘柄もあります。
この路線が好きなら、熟成表記ボトルよりも安い価格で入手できるのがメリットです。
ウイスキーと熟成年数の関係
できれば熟成年数重視というのが世間の風潮ですが、ウイスキーは熟成年数が長いほどおいしいわけではありません。
熟成にはピークがあり、ピークを過ぎてしまえば渋みや苦みが強くなってきます。
同じ蒸溜所でつくったモルト原酒でも熟成10年でピークを迎える原酒もあれば、もっと寝かせないといけないものもあります。
一般的には12年以上の長期に及ぶほどピークを迎える原酒は少なくなり、管理の手間もかかり、高価なものになります。
ちなみに、樽が呼吸することで原酒から失われていく「天使の分け前」が年間で2%とすると、単純計算では樽詰めされたウィスキーは50年で空っぽになってしまうことに。
また、樽のピークを完全に過ぎて寝かしすぎてしまったら、最後にはウイスキーの味と香りではなく「木材の味」になってしまうそうですよ。
味わってみたい気もします(笑)。